アスリートの指導者の考え方や選手との接し方には、時折共感を覚えることがある。14季ぶりにバレーボールのVリーグ優勝を達成した男子1部のサントリー山村宏太監督もその1人。1つ1つの質問に丁寧に答える様子や試行錯誤を続ける指導法を聞くと、等身大の姿で受け止める良き指揮官という一面が見える。今季から主将を務めた大宅真樹との関係は、理想の上司と部下の姿と重なった。

今月4日に千葉・船橋アリーナでプレーオフ決勝が行われ、パナソニックにストレート勝ち。就任1年目ながら、リーグ優勝獲得に貢献した。前回優勝時(2006-07)は現役選手として味わったが、以来14年遠ざかっていたリーグタイトル。山村監督は「みんなに勝たせてもらった」など大舞台でも物おじしないプレーを見せた選手たちを称賛した。

Vリーグ男子ファイナルを制し記念撮影に臨むサントリーのチームメートたち(2021年4月4日撮影)
Vリーグ男子ファイナルを制し記念撮影に臨むサントリーのチームメートたち(2021年4月4日撮影)

昨年2月24日のチームの公式ツイッターには、「強くなれ。」と書かれた写真が投稿されている(https://twitter.com/sun_sunbirds/status/1231876852983054337)。泣き崩れるセッターの大宅を、当時コーチだった山村監督が支える1枚。その日はプレーオフ準決勝でジェイテクトと対戦し、1セット先取しながらも逆転負けを喫し3位となった日だ。

優勝後の会見で今季主将を担った大宅は「昨夜ぐらいから昨シーズンのジェイテクト戦が頭によぎっていて、勝って終われたのが良かった」と実感を込めた。指揮官にも大きな信頼を寄せ「(山村監督は)くだらない話も真面目な話もしてくれて、親子みたいな関係性でした」と話した。

山村監督自身は指導スタイルについて「型にはめず、選手1人1人と向き合うタイプ」。普段から選手と会話を重ねながら、時には解決策が見つからず選手と一緒に悩む。08年北京オリンピック(五輪)代表などを務め17年まで現役生活を送っていたことから「選手寄りの考えができる」と強みに挙げた。

山村宏太氏(2012年6月6日撮影)
山村宏太氏(2012年6月6日撮影)

引退後は指導者の道に進み、イタリアでコーチ留学を経験。「いろんな指導者の方と出会いましたが、自分の特性を考えた時にどの人にも当てはまらない。自分なりのスタイルを貫いていこうという思いがあります」。

就任以降特に時間をかけて話し合いを重ねた選手が、大宅だ。「(大宅は)キャプテンというプレッシャーの中、人間的にもプレーヤー的にも成長が見られたシーズンだった」。教え子の活躍に目を細めた。

今後目指すべき監督像について問われ「今後も選手に寄り添って、選手たちとともに成長できる監督を目指して。時にはいばらの道に進むこともあるかも知れませんが、僕はそういう監督になりたいです」。ひときわ熱量のこもった言葉だった。

報道陣から飛んでくる1つ1つの問いを「難しい質問ですね」と苦笑いを浮かべながら、時間をかけて丁寧に回答する。そんな姿を見たり大宅の話を聞いたりするうちに、選手に寄り添う良き指揮官のイメージだけではなく、理想の上司像にも当てはまるのではないかと思った。

新年度が始まりはや1週間余り。部下との付き合い方に悩む管理職の皆さんも、山村監督の考えを参考としてみてはいかが?【平山連】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)