水の世界一を争う2年に1度の水泳世界選手権が今日24日、ロシア・カザニで開幕する。25日からシンクロナイズドスイミングがスタートし、8月2日からは競泳が始まる。前半を盛り上げるシンクロは、88年ソウル大会銅メダリストでスポーツコメンテーターの小谷実可子氏(48)が日刊スポーツ紙上で徹底解説。初めて男子が加わった競技の魅力と見どころを、かつての女王が語った。

 今大会のシンクロは楽しみが数多くあります。まずは男子が初めて出場する混合デュエット。シンクロ界にとっては、新時代への1歩になるはず。そして、井村コーチが復帰した女子のデュエットとチーム。一時の低迷を脱して、日本の立場が変わりそうです。

 シンクロ界に男性が入ったのは、とても意義深いこと。ただ男女で組むというだけでなく、いろいろと考え、工夫している。安部選手のいいところで、好感度も高い。この種目にかける情熱とひた向きさは、審判の心を動かします。第1号が彼で、日本はよかった。

 最初は立ち泳ぎさえうまくできなかった。足が下に落ち、手で何とか浮いていた。男子だから脂肪がなくて、浮力もない。選手にとって、コーチの注意を聞くときは「休憩」。でも、彼にとっては立ち泳ぎの練習だった。それが今ではお尻まできれいに上がる。3カ月でこれほど上達した選手は、見たことがありません。

 男子シンクロの先駆者でもある米国のビル・メイは「10年間、どれだけ待ったか」と話していました。イタリアの選手は安部選手に憧れて、競技を始めたそうです。みな特別な思いを抱いて臨む試合だし、予想は難しい。でもフランスとスペインが出ないTR(テクニカルルーティン)はチャンス。ここでトップ3に入ればFR(フリールーティン)にもつながります。

 男子が入り、一般の人の見方も変わります。競技として認められることも大きいですね。私が現役時代のシンクロ委員長は中野成章さんです。その中野さんは、実はサッカー日本代表の武藤嘉紀選手のおじいさんだったんです。1人男性がいるだけで雰囲気は違う。男子が入ることで、シンクロ界が健康的になります。

 デュエットとチームは07年大会以来のメダルが狙えます。井村先生が戻り、練習はすごく厳しくなった。水に入る前の歩き方から表情まで、当たり前のことだけど彼女たちは戸惑ったでしょう。その中で井村先生を信じ、昨年のW杯でウクライナに勝って2位に入った。ロシア、中国に次いで3番手に入る計算が成り立つ。すごく大きいです。

 ここ何年もの間「最高の演技をしたい」と言っていた選手たちが「メダルをとりたい」と言っている。そう言える気持ちの変化がうれしいですね。今大会は、男子の参加とともに日本が来年の五輪に向けて表彰台に復帰できるかというのが、最大の見どころになります。

 ◆小谷実可子(こたに・みかこ)1966年(昭41)8月30日、東京都生まれ。85年に初めて日本選手権で優勝し、86年マドリード世界選手権デュエットで伊藤恵と組んで銅メダルを獲得。88年ソウル五輪ではソロと田中京と組んだデュエットで銅メダルに輝いた。91年世界選手権ソロ銅、高山亜樹とのデュエットで銀メダル。92年バルセロナ五輪後に引退し、スポーツ関連の要職を歴任。20年東京五輪招致にも尽力した。今大会はテレビ朝日で解説も務める。