女子100メートル平泳ぎで鈴木聡美選手(25=ミキハウス)が復活しました。2位でリオ切符を獲得。ロンドン五輪のチームメートとして、これは本当にうれしい。

 ロンドン五輪でメダル3個を獲得して一躍ニューヒロインになりましたが、その後、記録が出なくなりました。体重が増えやすい体質で、神田コーチは「アメ1個で太る」と話しています。食事などギリギリまで制限していた体が、リラックスした状態に変わって、そこから気合が入らなくなったように見えました。ピュアな性格もあって悩んでいたと思います。

 ふっ切れるまで練習したのでしょう。予選は緊張していましたが、準決勝では本当にいい泳ぎが戻っていました。ロンドン五輪後の2年ほどは上体の動きとキックのタイミングが合っていない感じで、動きがカクカクしていました。でも今日の泳ぎは4年前のように伸びやかで滑らかだった。

 レース前には「ボンバーらしくいきなよ!」って声をかけました。初めての代表合宿で自分から「ボンバー(爆弾)って呼んでください」とあいさつしていたことを思い出します。今日は久しぶりにすてきな笑顔が見られました。

 この4年間、彼女にとってはとても大事な期間だった。1度落ちて上がってくるのは、本当に大変なんです。水泳選手としてだけではなく、これからの長い人生にも大きな影響を与えた時間だったのではないでしょうか。スランプで悩んでいる選手にも、ぜひ彼女の生き方を見てほしいと思います。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪代表)

 ◆伊藤華英(いとう・はなえ)1985年1月18日、埼玉県生まれ。00年日本選手権に15歳で初出場。01年世界選手権で初代表入り。08年北京五輪で背泳ぎ2種目出場、12年ロンドン五輪は自由形リレー2種目出場。12年秋に現役引退。順大大学院博士後期課程。173センチ。