男女計9階級の決勝が行われ、男子フリースタイル74キロではリオデジャネイロ五輪代表の高谷惣亮(28=ALSOK)が2年ぶり4度目の優勝を飾り、8月の世界選手権(パリ)の代表に決まった。同97キロ級はプレーオフで昨年の全日本選手権覇者の赤熊猶弥(26)が勝って代表入り。女子は53キロ級で向田真優(19)が2連覇して代表を確実にした。男子は昨年の全日本王者が優勝すれば代表で、優勝者が異なる場合はプレーオフを実施。女子は今大会などを参考に日本協会の強化委員会が選考する。

 端正な顔立ちの高谷は、決勝の残り3秒で勝利を確信し、スタンドへ両手を掲げた。そのまま終わると、カメラマンの前に足を運びポーズ。「ブルゾンちえみさんのものまねでした」と、余裕のパフォーマンスで、フリースタイル74キロ級での絶対王者を印象づけた。

 開始直後、15秒で20歳の山崎にタックルを許しポイントを先制された。だが、「右手が浮いたところを入られた。一呼吸置いてリラックスした。焦りはなかった」。そこから山崎の頭をペシペシとたたき、レフェリーに注意を受けたが、山崎がじれて上体が浮いたところで中に入って逆転。「ロシア選手との合宿で同じことをされた。僕も嫌で、いらついたところでポイントを取られた。(山崎の)頭を下げることをテーマにしていた」と解説した。

 14年の世界選手権で2位に入った。五輪は12年ロンドン、16年リオデジャネイロと2大会連続で出場。1月には拓大時代から交際していた女性と結婚し、心技体は充実期に入っている。「結婚して優勝できないと言われたくなかった」。責任感も増し、振る舞いには風格も漂う。「世界選手権では(3回戦敗退の)五輪の借りを返したい」。その言葉に現実味を感じさせる圧倒的な逆転劇だった。【井上真】