女子シングルスでリオデジャネイロ五輪銅メダルの奥原希望(22=日本ユニシス)が、1時間49分の死闘を制し、同種目で日本勢初の優勝を飾った。決勝で同五輪銀メダルのシンドゥ・プサルラ(インド)と対戦。昨年の五輪準決勝で敗れた因縁の相手に2-1(21-19、20-22、22-20)で勝った。日本勢の世界選手権制覇は77年第1回大会女子ダブルスの栂野尾悦子、植野恵美子組以来2度目。

 涙の優勝だった。昨年五輪準決勝で敗れたプサルラとの決勝戦は1時間49分に及んだ。終始競り合いの展開。157センチの奥原が辛抱強く粘り、20センチ以上も長身の相手のミスを誘った。試合後のインタビューに「五輪後は苦しかったが、周りの支えでここまでこれた。幸せです」と涙を浮かべながら英語で答えた。

 五輪銅メダルからの1年は苦闘の連続だった。昨年9月に右肩痛を発症。12月の全日本総合では無念の途中棄権で涙した。両膝手術を乗り越えて出場した五輪の先に再びケガの苦しみが待っていた。焦りはあったが、すぐに「東京五輪へ体を作り直す」と切り替えた。

 利き手の右腕のケガ。長年酷使してきたことで、体にゆがみが生じていることが分かった。左右対称の体作りを心掛け、左打ちの素振りを増やし、左で練習試合もした。「もともと肩周りが弱点」と片山トレーナー。肩の可動域を広げるトレーニングも取り入れた。これまでは万歳をしたとき、両腕に耳がつかなかったが、今はぴったりとつくようになった。

 肉体改造に取り組み、3月には実戦復帰も、試合勘はなかなか戻らない。数センチの差で雌雄を決する世界で、一時は狙ったところと1メートル以上も感覚のズレがあった。だが、地道に修正。6月には感覚を取り戻した。「東京五輪に向けては常に頂点を目指す」と自信を取り戻して現地に乗り込んだ。ケガ明けで体づくりは「まだ初期段階」。そんな状況の中での優勝は大きな価値がある。