男子テニスで元世界4位の錦織圭(27=日清食品)が、8月に右手首の腱(けん)を負傷して以来、初めて自らの言葉で現状を語った。日刊スポーツのテニス担当・吉松忠弘記者が米フロリダ州の練習拠点で取材した。

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 7月のウィンブルドン以来、約4カ月ぶりに会った錦織は、思いの外、元気だった。IMGアカデミーに愛車ジャガーで乗り付け、降りてきた彼に「元気?」と第一声を投げかけると、満面の笑みで「元気です」と明るく答えた。

 11月某日のIMGアカデミー。取材日は、午前10時から、昼休みを挟んで、午後6時ごろまで、1日密着した。ネット用の動画撮影のために、ビデオを回していると、普段と違う記者の行動に「どうしたんですか?」。コート上で、アップのランニングの最中には、こちらを見て「何か変な感じ」と笑った。8月の受傷から、すでに約3カ月が経過しており、回復も順調。復帰戦こそ未定だが、コート上での練習も始めており、少しずつ手応えをつかんでいる様子だ。

 この日のメニューは、まずロバート・オオハシ・トレーナーと右腕のリハビリ。約30分ほど入念に行うと、バイクで10分間ほどの脚力トレーニング。その後、コートに立った。コート上でも、最初はオオハシ氏とフットワークや体幹のトレーニング。その後、ダンテ・ボティーニ・コーチが登場だ。

 ヒッティングのために使用するボールは2種類。1つは通常のボール。もう1つは、子どもがテニスを学ぶ途中で使用する空気圧75%で柔らかいボールだ。右手首に負荷がかかるフォアとサーブは75%圧のボール、バックは両手打ちなので通常のボールでの打球となる。

 また、手首への負荷を考え、約200グラム強の超軽量ラケットを3本特注。通常、錦織が使用しているラケットは約330グラムなので、約4割ほど軽い。超軽量ラケットと2種類のボールで、コート上の練習は進んだ。驚いたのは、強打をしていないにもかかわらず、打球時にストリングスが切れたことだ。これには本人もびっくり。まさか切れるとは思わなかったのか、替えのラケットを持ってきておらず、マネジャーが走った。

 ラケット、ボールともに「順調に行けば数週間ぐらいで普通に戻す」という。今は、「まだ(筋肉を使ってなかったため)痛いので。6週間、ギプスをしてたので、その(筋肉の)固さがなかなか抜けない」。その痛みが、どのぐらいで落ち着くのかが、現在の復帰への目安だ。

 ヒッティングが終わると、再びコート上でのトレーニング。きつめのトレーニングで、錦織の体から、すぐに汗が噴き出した。これで午前が終了。午後は2時ごろから、バイクにリハビリをみっちり行い、最後はインタビューで1日を締めくくった。【吉松忠弘】