名門・日大(関東)が不死鳥のようによみがえった。関学大(関西)に23-17と逆転勝ちし、27年ぶり21度目の大学王者となった。QB林大希がパスとランで239ヤードを獲得する大活躍で、1年生で初めてミルズ杯(年間最優秀選手)と甲子園ボウルMVPを獲得。黄金期再興へ、新世代が負の歴史に終止符を打った。日大は来年1月3日のライスボウル(東京ドーム、日刊スポーツ後援)で、今日18日にジャパンXボウルで対戦する富士通かIBMの社会人王者と日本一を争う。

 インタビューで日大の内田正人監督(62)は目を赤く染め、声を詰まらせた。「長かったですね…」に実感がこもる。ショットガン隊形を生み、70~80年代に黄金期を築いた故篠竹幹夫監督が06年に亡くなり、再建の重圧を背負ってきた。27年ぶりに甲子園で凱歌(がいか)を響かせた男の涙だった。

 涙を誘ったのは黄金期を「ユーチューブでしか見たことがない」18歳だ。第1クオーター1分過ぎに先制TDを奪われた後の12分36秒。QB林大からWR林裕へ1年生ホットラインの39ヤードTDパス。これで林大は勢いづいた。「前日練習では“聖地”に圧倒されたが、周りのおかげで自分らしいプレーができた」。走って両軍最多113ヤード、投げて126ヤードを稼ぎ、1年生で初のミルズ杯&甲子園ボウルMVPと主役を独占した。

 不死鳥をよみがえらせた男は大阪生まれだ。小学1年からアメフットを始め、3年から毎年のように甲子園ボウル観戦に通った。高校は関大第一に進学も、単位が足りず1年で転校。「ショックが大きくて」競技から離れることも考えたが、周囲の説得で大正へ。そこで立命大の名WRで、NFL欧州にも挑戦した日大の長谷川昌泳コーチ(35)に見いだされた。

 魅力の1つがリーダーシップで、長谷川コーチは「一見、生意気だけどそれが失礼にならない」という。その天分が上級生を引きつける。能力も超高校級だった。10ヤードのパススピードは、他のQBが70キロ台に対し90キロ台。「ランもむちゃくちゃパワフル」と評し、勝てるQBのすべてを備えた逸材が、頭角を現した。

 林大はオフェンスのハドルで「勝てない歴史から新しくマインドセットしよう」と声を出した。学年は関係なく、誰もがリーダーに。そんな風潮が新時代を築いた。「4年間勝ち続けたい」。18歳の司令塔は高らかに誓った。【実藤健一】

 ◆日大フェニックス 1940年(昭15)に創部。愛称は50年代に最強を自負したオール日大「不死鳥倶楽部」に由来。甲子園ボウルは55年に初出場し優勝。今回が34度目出場で、優勝21度は関学大の最多28度に次ぐ。ライスボウルは84年に初出場し、過去4度全て優勝している。