レスリング女子の伊調馨(33=ALSOK)がパワハラを受けたと内閣府に告発状が届いた問題で、加害者とされる日本協会の栄和人強化本部長(57)がレスリング部監督を務める至学館大の卒業式が17日、愛知県大府市の同大で行われた。

 谷岡郁子学長(63)は大学院、大学、短大も含め卒業生504人へ祝辞を述べた。その中で騒動についても言及。至学館高が甲子園に出場した時、歌詞やポップス調のメロディーが話題になり、CD化もされた学園歌である「夢追人」の歌詞を引用する場面もあった。副学長を務める吉田沙保里(35)は欠席だった。

 谷岡学長の祝辞の前半は以下の通り。

 

 保護者の皆さんにおかれましては、この2年間、4年間、至学館の一風変わった教育のやり方の中で、本当にご理解いただき、お支えいただきました。心より感謝申し上げます。そしてこの間、ご心配をおかけしておりますことを心よりおわび申し上げます。ご来賓の皆様におかれましては、本当に花を添えていただいて、ありがとうございます。

 そして卒業生。卒業おめでとう。私は今日は、オリンピックで君たちの先輩が金メダルを取った日よりもうれしいかもしれない。何が外で起きているか分かっていて、どんな風に私たちが言われているか分かっていて、君たちはさっきから、本当にたくさんの笑顔で私に目を合わせてくれた。信頼を送ってくれました。ありがとう。

 真実はいずれ明らかになるでしょう。至学館の過去にはいろんな問題があったかもしれないけど、私たちは真剣に取り組んで、爽やかに元気に、学生がいつも主人公で、時にずっこけながら、チャレンジしていく。そんな至学館をつくってきました。

 「一番高い 所に登って 一番光る 星をつかんだ」。この夢追人の歌詞は、吉田沙保里や伊調馨、こんな大先輩たちの栄誉をたたえるものではありません。「一番辛い 道を選んで 一番強い 心をまとった」(夢追人の歌詞の一部)。これが今の私たちへのメッセージだと思います。教育は不完全の者が、より不完全の者たちを、未熟な者たちが、より未熟な人たちを教え、導くのです。私たちは神ならぬ身で、誰も完璧ではありません。すべてを分かっているわけではありません。でもこの学びの場でお互いが切磋琢磨(せっさたくま)しあって、支え合って、そして先輩達が少しずつ少しずつ社会に出て、至学館の卒業生たちの元気さ、明るさ、ひたむきさ。こういうものを社会の中で照らしてくれる。君たちは今日、社会へ飛んでいく。

 君たちの卒業式までに、私の学生を守る、至学館を守るという姿勢を伝えたくて、一昨日、記者会見をいたしました。まあたくさんの抗議の電話が入っていて、この年度末の忙しい時に職員たちは大変です。1000本近くの電話が来ているのではないでしょうか。そして私は喜んでいいのか、悲しんでいいのか分かりませんが、小池百合子さんに似ているとか書かれてますし。たくさんのSNSのメールが来ています。例えば「すごい怖い学長だね」「すごい独裁者ではないの?」とか。「あなたの言っていることは100%パワハラだ」というのもありました。

 でも分かってて、言いました。君たちが心ないことを言われるのなら、それを最初に受けるのは私です。それが学長だと思います。レスリング部の子たちが、ひどい言葉を投げつけられるなら、それに立ちふさがって、守って、バッシングは私が受ける。これが学長だからです。そして君たちには明るくいてもらいたい、そう念じてきました。君たちは今日、元気な卒業式の中で、言葉にならなかった思いを見事に表現してくれました。本当にありがとう。感謝しています。そして君たちを誇りに思います。大好きです。

 

 後半へと続く。