男子の小関也朱篤(26=ミキハウス)が、2年連続平泳ぎ3冠を達成した。200メートル決勝を2分8秒45で優勝。100メートル、50メートルに続いて3個目のタイトルに涙を浮かべた。昨年12月に後輩に暴力を振るって3カ月の対外試合出場自粛。「泳いでいいか、わかりません」という葛藤の末に、実戦なしで4カ月ぶりのレースに出場。昨夏の世界選手権銀メダリストが、有言実行の3冠達成で再出発した。

 先頭だった小関は、150メートルで2位に落ちた。トップ渡辺と0秒13差でターン。「ここで負けたら本当にダメだろう。ここで負けたら、水泳やめてもいい」。無我夢中で泳ぎ、再逆転しての4連覇。レース直後、あおむけにぷかりと浮いた。「あきらめずに踏ん張ってよかった。ちょっと泣きそうになって。プールを出るのが遅くなった」と照れくさそうに言った。

 「泳いでいいのか、わかりません。どんな処分でも受け入れます」。昨年12月、スペイン合宿で集合時間の食い違いから、同じ所属の天井に暴力を振るった。帰国後の同25日、所属先のヒアリングにこう答えた。

 3カ月の対外試合出場自粛、日本代表活動の辞退、減俸。妻には自分の口で一連の出来事を説明した。妻は多くを口にしなかった。自分がしたことが身に染みた。「言われた(責められた)方が楽でした。何も言わなくて。家内なりに気を使ってくれたんだと思う。隣で支えてくれていた」。

 年が明けて1月24日、大阪・八尾市内のミキハウス本社。小関は、社長室で木村皓一社長に謝罪した。その後は本社ビル3フロアにある約20の部署全てを1つ1つ回って頭を下げた。「何をやってんだ!」という抗議の電話やメールが集まった「お客様センター」では深々と謝った。逆に「頑張れ」と言われた。その日朝から晩まで本社にいた。

 妻が「3つ優勝できればいいんじゃない」とぽつり言った願いに全力で応えた。「家内が学生時代からの付き合いで、僕がこういう性格だとか分かって気を使ってくれた。過去の3冠と重みもうれしさも違う。周囲の人に感謝したい」。世界選手権銀メダリストが、再出発した。【益田一弘】