世界21位の錦織圭(28=日清食品)は3日の男子シングルス4回戦で、過去2勝0敗だった同8位ドミニク・ティエム(オーストリア)に2-6、0-6、7-5、4-6で敗れ、8強進出を逃した。亜大教授でテニス部総監督の堀内昌一氏は、ティエムの強烈で深いスピンショットにカウンター攻撃を封じられ、サーブでも押し込まれて世界屈指のリターンが不発に終わったことが敗因と指摘した。

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 錦織は「いつもの場所」でプレーできなかった。立ち上がりからティエムの激しい回転のかかった速くて重いボールが、コートの奥深くに落ちて赤土の上で大きく跳ね上がる。ジリジリと後退を強いられた。3回戦までとはまるで別人。ベースライン付近、その内側にまで前進して相手のショットをカウンターで切り返す前陣速攻を完全に封じられた。ベストスイングをさせてもらえず、ショット自体に威力を欠いた。

 サーブ力でも後手に回った。ティエムの最速217キロのファースト、大きく跳ね上がって外に逃げていくスピンの利いたセカンドに得意のリターンが機能しなかった。1、2セットはファーストの確率、ファースト、セカンドサービス後の得点のデータでほぼ下回った。逆に甘くなったセカンドを何度もたたかれて失点する悪循環だった。サーブブレーク数は1対6。錦織のサーブは大会を通じて好調に見えたが、この日は基本的な体力差を速さと技術で埋めきれなかった。

 第3セット、錦織は開き直ったように無理な体勢からでも攻撃に転じた。ストレート勝利を意識したティエムのミスも出て一矢報いたが、ボールの回転力と深さに最後まで対応できていなかった。(亜大教授、テニス部総監督)