前大会準優勝で初の世界女王に輝いた朝比奈沙羅(21=パーク24)は、五輪への「教訓」としてサンダルにブラジルカラーのミサンガを付けている。

決勝では16年リオデジャネイロ五輪銀メダルのオルティス(キューバ)に指導3の反則勝ちを収め、昨年の雪辱を果たした。汗だくで取材エリアに現れると、左足サンダルのブラジルカラーのミサンガが光っていた。リオ五輪代表選考で落選し、その時の悔しさを忘れないために約3年前から付けているものだ。サンダルを履く度に、20年東京五輪は「絶対に出場する」と気持ちを高めている。

両親が医師の朝比奈は幼少期からの夢が五輪金メダルと医師になることだった。昨年9月末に本格的な医学部受験を見据え、勉強時間確保のため東海大女子柔道部を「卒部」した。4月の国内大会ではアジア女王の素根輝(18=福岡・南筑高)に2連敗。さらに、“二刀流”を目指すことで批判の声が上がった。柔道関係者からは「五輪が狙えるのに目移りするのか」。医療関係者からは「医学をなめるな」などと言われ、精神的に苦しんだ。悩み過ぎて熱も出した。

4月には柔道界初の大学に在学しながら実業団のパーク24に所属した。独自の道を歩み、自身でも前代未聞の柔道家と捉えている。柔道以外のことでも苦悩したが「全ては結果で見返す」と、不屈の精神と強い覚悟を持って今大会に臨んだ。

「この1年があって今がある。いろんな意見もあったけど、この道に進んで良かったと思う。後悔もしていない。さらに先の景色を見るために、ここからがスタート。もっともっと強くなる」

20年東京五輪で現役引退する。柔道人生も残り2年-。いばらの道を歩む21歳の柔道家は、世界女王となったこの日も足もとのミサンガを見つめた。