世界4位で全米覇者の大坂なおみ(21=日清食品)が、世界のトップの洗礼を浴びた。同9位のキキ・ベルテンス(オランダ)に3-6となったところで、左太ももの故障のために棄権した。大坂は通算3戦全敗で、1次リーグで1勝も挙げられずに敗退が決まった。

最後に待っていたのは最悪の幕切れだった。勝てば準決勝進出の可能性が残された試合。しかし、最後まで体が持たなかった。「第1試合で左太ももを痛めた。どんどん悪くなった」。第1セットの3-5で治療の時間を取った。左太もものテーピングをまき直し、プレーを再開。しかし、力ないサーブはダブルフォールトを繰り返した。涙を浮かべて棄権を申し出た。

この日のスタートはそれほど悪くは見えなかった。しかし、2オールで「また痛みが出た。どんどん激しくなった」。気持ちで耐えていたのか、3オールから自分のサービスゲームを落とすと、一気に動きがおかしくなった。無念の棄権に追い込まれた。

今季は3月に4大大会に次ぐ格のBNPパリバ・オープンで自身初のツアー優勝。そして9月の全米で日本人初の4大大会制覇を成し遂げた。「クレージーな1年だった。新しい経験をたくさんした」。それだけに「途中で棄権したくなかった」と悔やんだ。

勝てば勝つほど試合数は増える。今季は本戦だけで、この日が60試合目だった。16年は33試合で、昨年は40試合。16年の倍、昨年の1・5倍に、高いレベルでの試合が増え、体や心への負荷がかかった。「とにかく家に帰って休みたい。犬に会いたい」。

自ら「完璧主義者」と言う。少しのミスも許せない。勝敗より自分のプレースタイルが大事。それが少しでも崩れると、心が落ち込んだ。張り詰めた心や体はいつか、はち切れる。

「すべての大会に優勝できる選手などいない」。負けない選手や、ミスをしない選手などいないのは分かっている。来季は自分を許す経験を身につけることが課題なのだろう。新シーズンは12月30日からのブリスベン国際で幕を開ける。【吉松忠弘】