渡辺の夢は渡辺家の夢でもあった。グリズリーズの渡辺雄太(24)が日本人2人目のNBAデビューを飾った。快挙の裏にはともに日本リーグ熊谷組の選手だった父英幸さん(60)、シャンソン化粧品の選手だった母久美さん(56)の存在があった。幼少期から指導してきた父英幸さんが息子への思いを込めた手記を寄せた。

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雄太、NBA出場おめでとう。小さい頃からの夢がかなった瞬間だったね。ただし雄太の夢はこれからもずっとNBA選手でありつづけることだから、これまで同様、努力を怠ることなく「初心、謙虚」の教えを守ってこれからもひたすら努力を続けてください。

2歳の時、家にあった小さなリングにシュートをする雄太を見たときに、利き手の左脇がしっかり締まっていて、きれいなフォームでした。様になっていてびっくりしました。シュートを教えたことはなかったので、ああ、子どもって親を見ているんだな、僕のシュートフォームをしっかり見ていたんだなと思った瞬間でした。その時はバスケをやってくれたらいいなぁと思いましたね。

まだ横浜にいた2歳のときから、長距離を一緒に走ったね。走りにいこうか、と私が誘うと雄太は「いくいく」と一緒についてきましたね。小学校の長距離走では、1年生の時に6年生を抜かしたこともありました。NBAのワークアウトでの3分間コートの長辺を往復する持久走では、記録をつくったとも言われました。

とにかくバスケが好きで、小学校からずっと今まで練習を休んだことはありませんでしたね。三木の家近くの空き地にあったゴールリングでは、最高1000本のシュートを入れるまでフリースローの練習をしたね。目標達成まで4時間以上もかかったね。私が選手の時はフリースローをほぼ入れていたので、雄太には「とにかくフリースローは落とさないように。90%入れて当たり前だぞ」と何度も言いました。「渡辺にフリースロー打たれたら2点取られる」と思われる選手になってほしいとの思いでした。

24歳は若くない。与えられたチャンスをいかに生かすか。試合や普段の練習態度で人一倍努力を続けてください。(渡辺英幸)