世界9位の錦織圭(29=日清食品)が、1回戦に引き続き2セットダウンからの驚異の逆転勝ちだ。同23位のパブロ・カレノブスタ(スペイン)相手に、6-7、4-6、7-6、6-4、7-6の4大大会自身最長5時間5分の死闘を制した。3年ぶり4度目のベスト8に進出するとともに、この勝利で、28日発表の最新世界ランキングで7位以上が確定した。23日予定の準々決勝では同1位のジョコビッチ(セルビア)と対戦する。

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時間経過を示す数字は5時間を超えていた。初めて手にしたマッチポイント。異常な集中力が高まる。錦織が打った15本目のエースは、時速191キロとなって火を吹いた。「もう言葉はない。どうやって戦ったかも思い出せない。最後、一番気持ちよかった」。勝利でも、もう喜ぶ姿を見せる力も残っていなかった。

何という男だろう。これまでで初めて、4大大会1大会で3度の5セットを戦い、2度の2セットダウンからの逆転勝ち。4大大会自身最長の5時間5分を戦っても「まだ不十分」と苦笑いで「タフになった。足は疲れているが大丈夫」と胸を張った。

2回戦と同様の最終セットの10点先取タイブレークは、5-8まで追い込まれた。次のポイントで、相手が打ったフォアのパスがネットに当たり錦織サイドに落ち、それを錦織が返球した。まず線審が相手のパスをアウトと判定。しかし相手はビデオ判定を要求。その結果はインだった。

ただ、錦織が返球しており、もし相手のショットがインでラリーが続いていても、相手は錦織の返球を取れなかったと主審が判断。錦織のポイントとなった。これに相手が激怒。しかし、そのままプレーは進み、錦織が5点連取で逆転勝ちした。試合終了後、カレノブスタは主審と握手せず。退場する時には、自分のラケットバッグをコートにたたきつけて怒りを表した。ただ錦織は「あれは1ポイントにしか過ぎない」と意に介さなかった。

滑り出しから、錦織の動きは、どことなく鈍かった。足が動かないためフォアに回り込むのも1歩、遅くなる。第1セットは2度もリードを奪いながら、その度に追いつかれタイブレークで落とした。足がついていかないと、打点にうまく入れず、得意のストロークも球が伸びなかった。「焦ってしまったのかも」。それでも「最後まで集中を切らさなかった」と、逆転につなげた。

次戦は過去2勝15敗の王者ジョコビッチが相手だ。「(どう戦えるかは)分かりません」と正直だが、まずは「(今日の)リカバリーが優先」と話す。気力も体力も極限状態だが、今季負けなし8連勝の勢いで、王者に挑む。【メルボルン(オーストラリア)=吉松忠弘】