16年リオデジャネイロ五輪代表の朝長(ともなが)なつ美(27=警視庁)は10位に終わり、日本勢初のメダル獲得とはならなった。

1種目の競泳では自己ベストを2秒以上更新、3種目の馬術で満点を獲得して一気に5位まで追い上げた。しかし、最終種目の射撃&ランニング(複合)で海外勢に抜かれて後退。気温30度の暑さの影響も受け、体力も限界を超えた。10位でゴールすると倒れ込んで、天を仰いだ。「優勝して東京五輪の出場権を獲得したかった。東京大会で決めたかった。後悔しかない。自己評価は…60点ぐらい」と唇をかんだ。

12位だったリオ五輪では「世界との差」を痛感した。“練習の鬼”となり、毎日午前7時から12時間超の猛練習で追い込んだ。17年2月のW杯では日本勢過去最高の4位に入り「国際大会で金メダル」を目標に掲げた。利き手の右肘関節滑膜炎を発症する中、海外の試合に強行出場。肉体は悲鳴を上げ、成績不振に陥った。同10月に手術し、実戦復帰した昨年は5種目の感覚が戻らず、苦難の日々が続いた。「もう戦えない…」。一度は引退も考えたが「近代五種が好き」という気持ちが上回り、東京五輪をゴールと決めた。満身創痍(そうい)で臨む2度目の大舞台まで1年1カ月。

「何があっても東京五輪で最後。金メダルを取るのは自分しかいないと思っているし、悔いのない日々を過ごしたい」

27歳の女性警察官は強い覚悟と決意を持って、前だけを向いた。

 

◆近代五種 近代五輪の創設者クーベルタン男爵が考案し、1912年ストックホルム五輪から採用。1日で5種を行い、総合得点で順位を競う。欧州では人気で貴族スポーツと呼ばれる。日本協会の登録者数は五輪競技団体の中で最少のわずか45人。競技順は以下の通り。

▼フェンシング ランキングラウンド(RR)はエペによる1分間一本勝負の総当たり戦。勝率により得点が増減。30人超と対戦するため集中力が必要。ボーナスラウンド(BR)は30秒一本勝負の勝ち残り戦。

▼競泳 200メートル自由形。2分30秒を基準値の250点として、1秒あたり2点が増減。瞬発力と持久力が求められる。

▼馬術 馬は抽選で決定。試乗は20分。12障害で300点満点からの減点方式。馬との相性と運も大切。

▼射撃&ランニング(複合) 2種を交互に4回行う。射撃はレーザーピストルで、10メートル先の的に50秒で5回命中させる。ランニングは800メートルで、この着順が最終順位となる。