7月1日に、テニスの4大大会、ウィンブルドンが英国ロンドン郊外で開幕する。テニスの聖地とうたわれるセンターコートを舞台とした大会は、最も日本になじみ深い。その開幕を控え、3回にわたりウィンブルドンについて連載する。最終回は、「大坂なおみの展望」だ。

29日に行われた会見で、世界2位の大坂なおみ(21=日清食品)は、1位だった時の重圧を明かしていた。「想像以上のストレスだったし、それに対して、うまく準備ができていたとは思わない」。特に「いろいろ考えすぎて」と話した時には、表情がやや曇った。

1位以上の世界ランキングはない。それ以上、登る道はない。変化があるとすれば、落ちるだけだ。「今は2位だから、(1位を)守らなくてはいけないとか、多くのことを考えなくていい」。大坂は、一時、目標を見失っていたようだ。

無理もない。18年全米に優勝してから、まだ1年もたっていない。18年全米前には、世界ランクがトップ20だったとはいえ、得意のハードコートで3大会に出場し、1勝3敗だった。それが、18年全米優勝以降、そして今年の1月に世界1位になって以降は、すべての大会に優勝を義務づけられたと感じていたのだろう。

ただ、それにしても精神的な不安定さは否めない。前哨戦のバーミンガムの大会2回戦では、プティンツェワ(カザフスタン)に集中力を欠いて敗れ、記者会見を拒否した。「いろんなものを抱え込みすぎて分からなくなった。ショックすぎて言葉も出なかった」。

そのプティンツェワと、今大会の1回戦で対戦するのも、何かの因縁か。19年センターコートの女子最初の試合で、大坂がどのようなプレーを見せてくれるか。普通に戦うことができれば、実力差は明らかなのだが。

実は、大坂の苦悩とともに、日本女子はスランプに落ち込んでいる。今大会、シングルス本戦出場の日本女子は大坂1人だけだ。4大大会では00年全仏以来、ウィンブルドンだけで言えば、86年以来33年ぶりの少なさだ。大坂の活躍で、少しでも日本女子復活に刺激を与えたい。(おわり)

 

◆ウィンブルドンは、WOWOWで7月1日~14日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。