オリンピック(五輪)2連覇の王者が、激しく対抗心を燃やした。フィギュアスケート男子でグランプリ(GP)シリーズ第6戦NHK杯を優勝した羽生結弦(24=ANA)が24日、エキシビションが行われた札幌市の会場で、一夜明け会見を行った。進出を確定させたGPファイナル(12月、イタリア・トリノ)に向けて、3月の世界選手権で敗れたネーサン・チェン(米国)を意識。並々ならぬ勝利へのこだわりを持ち、3年ぶりのファイナル優勝を目指す。

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柔和な表情とは程遠い、強い決意の言葉だった。羽生は同じくGPファイナル進出を決めているチェンに対し、対抗意識をむきだしにした。「自分にとってファイナルはネーサン選手との戦いとしか思っていない。やっぱり勝ちたい。勝つことに意味があると思っている」。3月の世界選手権では敗れた因縁のライバル。GP2連勝の喜びに浸ることなく、視線はすでに前へ向く。

「とりあえず優勝したい。結果って1番大事」。世界選手権ではフリーと合計点で世界最高点を記録したが、自身の後に演技したチェンにすべて更新された。手に汗握る、激しい優勝争いを繰り広げたが、結果はついてこなかった。「記憶には残るかもしれないけど、記録には残らない。それは意味がないこと。記録に残してナンボ」。今は頂点しか見ていない。

競り合うことが、自らの向上につながる。総合得点での順位が得点されない17年世界国別対抗戦を除き、チェンとは過去7大会で争い4大会で優勝。今季ベストはショートプログラム(SP)、フリー、合計点の3つとも、自身のGPスケートカナダの記録だが、ライバルの実力は一番把握する。「ネーサン選手がこんなものじゃないっていうのは自分自身すごく分かっている。彼のベストとも戦いたい気持ちが常にある」。ライバルとの切磋琢磨(せっさたくま)に意義を見いだした。

17年NHK杯で右足首負傷の原因となった大技の4回転ルッツは、すでに練習で跳んでいるという。フリーに組み込むかについては「入れる、入れないっていうのは『先発ピッチャー誰』っていうのと変わらない。そこはしっかり自分自身で考えた上で」と、答えは自分の胸の中だけにしまった。SP、フリーともに昨季の再演だが、簡単には手の内は明かさない。チェンに勝ち、3年ぶりのGPファイナル優勝するため、全てを懸ける決意だ。【佐々木隆史】