秩父宮のスタンドは、盛り上がっていた。東芝のリーチやサントリーの松島、流らW杯戦士が出場するとあって、2万人以上の観客が詰めかけた。相変わらず年齢層は高いが、その中で若い女性も目立った。ワールドカップ(W杯)で日本が南アフリカに敗れてから84日。ファンも、この日を待ちかねていた。

長い空白は心配だった。盛り上がりの反動で「3カ月後には、忘れられているのでは」とも思った。しかし、開幕節を見る限りは杞憂(きゆう)だった。W杯で日本中を沸かせた代表選手に対する声援は変わらなかった。

空白の間、選手たちは積極的だった。年末年始、テレビでW杯選手を見ない日はないほどだった。選手は自ら露出することでファンの関心を引き留めた。「にわか」を取るには、競技の認知度を高めることだ。コアなファン相手の試合より不特定多数が目にするメディアに出た方が、効果があったのかもしれない。

この日、6会場には昨年比1・5倍の9万2347人が詰めかけた。チケットの売れ行きは上々だが、W杯選手が多くいるチームに集中しているという。パナソニック、サントリー、キヤノン…。ラグビーという競技の人気ではなく「ラグビー選手人気」なのだ。

それでも、前回よりはいい。人気選手が分散しているし、W杯優勝の南アフリカなど強豪国の選手も多く加入している。「限られたチームの人気を全体に広げないと」とリーグ関係者。「にわか」が取れるかどうかは、協会やリーグ、チームが空白期に頑張った選手に代わって発信していけるかどうかにかかっている。【荻島弘一】