【ソウル8日】フィギュアスケート4大陸選手権(韓国)初優勝へ、男子の羽生結弦(25=ANA)が9日のフリーで令和版「SEIMEI」を舞う。前日7日のショートプログラム(SP)は世界新の111・82点で首位。公式練習で試した現在最高難度の4回転ルッツを入れ、まずはフリーと合計の更新を目指す。最終グループ22番滑走。午後3時ごろリンクに立つ。

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圧巻SPから一夜明け、羽生が木洞アイスリンクの地下練習場で調整した。冬季五輪2連覇の平昌大会フリー曲で、今大会から戻す「SEIMEI」の曲かけ通し。4分間の中では4回転ルッツを1回転にして確認し、音楽終了後に13分間かけてルッツだけの練習に充てた。この日はクリーンな着氷こそなかったが、SP翌朝だったためか軽め。最後は同じオーサー門下生のブラウン(米国)車俊煥(韓国)と、カナダ・トロントの拠点クリケットクラブ流のシンクロ滑走クールダウンで締めて沸かせた。

前日は、憧れのジョニー・ウィアーさん(米国)と同じ前演目「秋によせて」に別れを告げ、通算4季目の「バラード第1番」で世界新。ウィアーさんから「ユヅル・ハニュウはキングだ。4大陸のSPで世界記録を更新した。まるで魔術だった」とツイートされ“卒業証書”を受け取った。

この勢いをフリーに持ち込む。4分30秒から4分に短縮した新ルール対応版。既に3回転半と3回転フリップの間を3歩4秒に詰めるなど見どころは明かしているが、勝負では冒頭の4回転ルッツが肝要になる。フリーの自己最高は昨年10月スケートカナダの212・99点。この時は1本目の4回転ループが乱れて10・35点と基礎点を割っていたが、今回の4回転ルッツでミスが出なければ基礎点11・50点に羽生なら出来栄え点3~4点の上乗せは可能。SP同様、五輪V2演目への回帰でフリーと合計322・59点の自己ベスト更新が十分に見込まれる。

見据えるは3月の世界選手権(モントリオール)。フリーの224・92点と合計335・30点の世界記録を持つネーサン・チェン(米国)を破るべく、新たな生命を宿したSEIMEIを舞う。「自分にとって特別なプログラム。皆さんの五輪の印象を大切に演技したい」と話しつつ「当時とは経験値や表現の仕方が変わっている。また違ったものにしたい」と進化を約束していた令和版で4大陸の王者になる。【木下淳】

○…羽生が初優勝すれば男子初の「スーパースラム」が完成する。国際オリンピック委員会(IOC)運営サイト「オリンピックチャンネル」が定義したものでジュニアの世界選手権とグランプリ(GP)ファイナル、シニアの五輪、世界選手権、GPファイナルに4大陸(欧州勢は欧州選手権)を加えた6冠完全制覇の称号だ。かつて羽生が「1つの僕の壁」と話した関門の突破が懸かる。女子はキム・ヨナ(韓国)とザギトワ(ロシア)が達成した。