【デュッセルドルフ=峯岸佑樹】男子73キロ級で16年リオデジャネイロ五輪金メダルの大野将平(28=旭化成)が優勝し、2大会連続の五輪代表を決定的にした。

昨年8月の世界選手権以来の実戦で、準決勝まで5試合連続一本勝ち。五輪王者として安定した強さを示した。女子63キロ級でリオ五輪代表の田代未来(コマツ)と、同70キロ級で17、18年世界女王の新井千鶴(三井住友海上)も優勝し、代表入りがほぼ確実となった。男子81キロ級の永瀬貴規(旭化成)は初戦の2回戦で敗退した。

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28歳の五輪王者は、優勝しても満足感はなかった。「雨とは言えないけど、どんよりとした曇りみたいな感じだった。現状としては最低限で、ろくでもない試合だった」。危なげなく頂点に立ったが、自身が求める理想像とはほど遠く、こう評価した。

欧州ファンの大歓声を浴びながら、準決勝までオール一本勝ち。しかし、相手に内股などを警戒され、組ませてもらえなかった。3回戦ではブラジル選手より先に指導を2つもらい、ヒヤッとする場面もあり「73キロ級の全選手から首を狙われている」と言った。決勝は、18年アジア大会決勝で11分超の死闘を演じた18年世界王者の安昌林(韓国)に、内股で技ありを奪い優勢勝ちした。

昨年8月の世界選手権東京大会では、6試合連続一本勝ちで日本武道館を震撼(しんかん)させた。同11月のGS大阪大会を制すれば五輪代表に決まったが、直前に「柔道家の命」とする左人さし指を負傷し、欠場を決めた。握力70キロの左右の手で、他の選手とは異なる相手の両脇をがっちり握る組み方のため、影響が大きかった。今大会は本調子でなかったが、負けないのが大野の強み。「自分にしか味わえない境地でスリルがあった」。全選手から標的にされることを活力にする異次元の精神力を見せた。

27日の全日本柔道連盟の強化委員会で、五輪代表に決まる見込み。「代表権を獲得するためにドイツに来たわけではない。もっと高い境地で自身を追い込んでいる。本番では自分らしい良い柔道を見せたい」。最強王者は5カ月の日本武道館で、再び世界に衝撃を与えるつもりだ。

 

◆柔道の東京五輪代表選考 男女各7階級1人で、選手の準備期間確保を重視した「3段階」による選考で決める。(1)19年世界選手権優勝者が同11月のGS大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成で代表入りが決定。女子78キロ超級の素根輝のみが内定(2)同12月のマスターズ大会(中国)、2月のGSパリ大会、GSデュッセルドルフ大会終了時点で、27日に行われる強化委の3分の2以上が1、2番手の差が歴然としていると判断すれば代表選出(3)最終選考は4月の全日本選抜体重別選手権で、強化委の過半数の賛成で代表決定する。

◆大野将平(おおの・しょうへい)1992年(平4)2月3日、山口県生まれ。7歳で柔道を始める。東京・弦巻中、世田谷学園高では柔道私塾「講道学舎」で鍛え、天理大に進学。13、15、19年世界選手権優勝。16年リオ五輪金メダル。右組み。得意技は大外刈りと内股。世界ランク6位。趣味は風呂とサウナ。170センチ。