卓球元日本代表で現在ジュニア日本代表のコーチを務める山梨有理さん(32)が、故郷・静岡で第2の卓球人生を歩んでいる。16年の全日本選手権を最後に、現役を引退。18年から富士市内に卓球スクール「REGAL」を開校した。22年間の選手生活で培った技術、経験をもとに指導。教え子たちと新たな夢を追いかけている。

山梨さんは、18年9月に卓球スクール「REGAL」を開校。地元・静岡県で新たな挑戦を始めた。

山梨さん 教えることが好きでしたし、最先端の技術を伝えられる自信もあった。選手の育成や競技人口増加の力になれればという思いがありました。

現在は、競技志向のジュニア(小中高生対象)クラス。加えて、一般クラスや「卓球を楽しむ」ふれあい教室など、合計4クラスで100人を超える会員の指導にあたっている。

山梨さん 一般クラスの方でも、試合を目指す人と健康のためにやっている人もいる。目的に合った指導を心がけている。ただ、ジュニアは強化。技術だけでなく、あいさつや取り組む姿勢など人間力の部分から厳しくしています。

引退後は、卓球から離れる決意を固めていた。しかし、大学時代の恩師・呉光憲氏の誘いでホープス(小学生)ナショナルチームのコーチに就任。昨年の全日本選手権で準優勝の木原美悠(15=エリートアカデミー)らの育成に携わった。

山梨さん 誘いを断りきれなかったというのが正直なところ(笑い)。でも、その誘いがなければ指導者としての道を進んでいなかったかもしれないですね。

当時はコーチを務めながら、父仁さんが営む家業を手伝っていた。作業着にヘルメット姿で2年間を過ごした。ラケットを握る回数は減ったが、卓球への思いは常に抱えていた。

山梨さん この仕事を続けていく? と考えた時に、違うなという思いがずっとあった。その中で、父が「(スクールを)やるしかないよ」と背中を押してくれた。恩師と父には、本当に感謝しています。

巡り合わせ、家族の支えがあって歩み始めた指導者人生。スクール開校から約1年半、教え子も増えていく中で新たな夢もできた。

山梨さん 子供たちが強くなったと実感してくれることが一番。そして富士市のトップ、静岡県のトップを目指して、いつか日の丸を背負う選手が出てきたらうれしいです。

自身の技術、経験を次世代へ-。山梨さんの挑戦はこれからも続く。【前田和哉】

◆山梨有理(やまなし・ゆり)1987年(昭62)8月28日、静岡市清水区生まれ。幼少期に沼津市に移住し、門池小-門池中。中学2年時に秀光中(宮城)に転入。仙台育英高時代は全国総体で団体、ダブルス優勝。淑徳大(埼玉)に進み、全日本大学選手権で団体、ダブルス優勝。卒業後は十六銀行、日立化成でプレー。10年荻村杯ジャパン・オープンでダブルス優勝。11年には世界選手権(ロッテルダム)日本代表に選出されるなど活躍した。