新型コロナウイルスの影響で中止していた学校の部活動などのトレーニングを、より安全に再開するためのプロジェクト「Happy Restart Project」が注目されている。こん整形外科クリニック(新潟市中央区)の近良明院長(53)、同院理学療法士の加藤雄樹さん(31)らが中心になって立ち上げたもので長期間の活動中止から練習を再開する際のケガの予防法などに重点を置いた内容になっている。専用YouTubeチャンネルと、PDFを作成し、無料で公開している。

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「Happy Restart Project」では、ケガの可能性と予防方法を分かりやすく示している。長期の活動休止による筋力、柔軟性、記憶力などの低下と、急激に大きな負荷をかけることによって起きる障害、それを防ぐための負荷の上げ方、ウオーミングアップ、ストレッチの方法などを説明。これからの季節の気温上昇を考慮し、熱中症の予防法も加わった。

クリニックのホームページから無料ダウンロードできるPDFはA4紙10枚。内容説明とウオーミングアップの実例のYouTube動画は、それぞれ6分から7分ほどにまとめられている。YouTubeを正式に公開したのは22日だが、すでに県内だけでなく、全国クラスの競技団体、首都圏の大学などからも問い合わせが届く。

近院長は「安全にリスタートできる方法を、エビデンス(証拠)に基づく納得できる内容で提供できればと思いました」と話す。海外のデータなどを収集し独自に分析。全身の筋持久力は2週間の休止で28%低下するなど細かな事実の検証を積み重ねた。その結果、急激な運動を避け、4週間以上かけて活動休止前の負荷に戻していくことが、ケガのリスクを低下させると推奨。理学療法士の加藤さんは「現場で使うには、どんなデータがいいのかという視点でまとめました」。動画は指導者が選手に対して自分の言葉で説明できるように意図して音声を入れなかった。

これまでも学校の定期試験のあとにケガをする学生などを診てきた。新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言は新潟県では14日に解除されたが、各競技とも試合や本格的な練習ができなかった期間は3~4カ月に及ぶ。ケガが増える予測はできる。近院長は「少しでも不安を解消させてあげたい。僕らができるのはそういうことです」。データを無料公開したのは「心意気です。どのようにアレンジしていただいても構いません」。コロナ禍で苦しむスポーツ界が安全に再始動することを願っている。【斎藤慎一郎】

◆「Happy Restart Project」無料公開 

こん整形外科クリニックのホームページ「KOSMI」で公開。PDFは内容説明の実践ポイント編がhttp://kosmi.jp/data/0001.pdfから、ウオーミングアッププログラム例はhttp://kosmi.jp/data/0002.pdfからダウンロードできる。動画は公式YouTubeチャンネル「KOSMI Athlete Support Project」で配信している。