新型コロナウイルス感染拡大後、東京オリンピック(五輪)競技の屋内・対人種目では初の全日本級として開催されている大会の決勝が行われた。17~19日に行われた予選を勝ち抜いた男女6種目の計12人が日本一を争った。

第5試合は女子エペが行われ、2児の母として奮闘中の佐藤希望(34=大垣共立銀行)と寺山珠樹(18=日大)が対戦。佐藤が14-9で寺山を下し、5年ぶり6度目の優勝を遂げた。女子エペでは史上最多のV回数となり「それを目指していたので、かなってうれしい」と満面の笑みだった。

序盤は穏やかに、なかなかポイントが入らず推移したが、中盤以降に激化。佐藤が10-6とリードを奪えば、寺山も「離されてたまるか」と9-10と肉薄。しかし最後は34歳がベテランの意地を見せ、残り11秒からの4連続ポイントで突き放した。

会場近くのホテルでは佐藤の長男たちが映像観戦。特殊なシステムを用いての「リモートハイタッチ」をへて決勝に向かい「会場で応援してもらえるのが一番だけど、子供がいるような感じで戦えた。子供の前で負ける姿は見せられないので、何が何でもという気持ちでした。『久々にママの試合を見る』と言って福井から来てくれたので、こうして新型コロナ禍の中で試合の準備をしてくださった皆さんに感謝しています」と頭を下げた。

この試合はリストバンドを2人が着用し、心拍数も可視化された。ともに190台の後半まで上がった熱戦。力を出し切った寺山は2年ぶり2度目の準優勝に「悔しいのが一番。予選後1週間やってきての結果なので力不足でした」と振り返った。同じく会場近くでは寺山の家族が観戦。心拍数が、離れた家族の手元に置かれた球体に光と振動で伝わるという新たな取り組みに「家族が後ろにいてくれるような感覚でした」。悔しい敗戦にも大会の試みには感謝した。【木下淳】