【第4試合】

来夏に延期された東京五輪(オリンピック)代表入りを確実にしている山田優(26=自衛隊)が、加納虹輝(22=JAL)を振り切った。5月中旬に腰椎椎間板ヘルニアの手術を受け、9月の全日本選手権は「まだ復帰できる状態ではない」と欠場。この試合が“復帰戦”だった。

第1ラウンド(R)は加納が先手を取った。ファーストポイントから4連続で得点し、山田に1点も許さない完璧な出来。<加納4-0山田>で第2Rに突入した。

今度は、山田が第一人者の意地を見せる。仕切り直しを機に、一気に6ポイントを連取して逆転。会場で妻子が観戦している前で格好いいところを見せた。

<山田9-7加納>で迎えた第3Rも山田が攻め立てる。時折、仕留め切れなかった攻防を悔しがる声を上げつつ<山田13-9加納>とリードを広げた。

しかし、ここから加納が巻き返した。前に圧力をかけ、山田が出てきたところを返り討ちにしたり、攻めて押し切ったり。同時ポイントだった9点目から6点を連取。残り19秒で<加納14-13山田>と試合をひっくり返した。

このまま突き抜けるかと思われたが、山田は冷静だった。8秒後、狙いすました突きで<山田14-14加納>に。延長戦1分間の一本勝負に持ち込むと、最後は相手の剣を引いてかわしてからのコントルアタック(カウンター攻撃)を決め<山田15-14>の接戦を制した。

山田は昨年のアジア選手権、全日本選手権で優勝。今年3月には国際大会のグランプリ(GP)ブダペスト大会を初制覇した。世界ランキング2位につける日本のエースが、記念すべき第1回大会を締めくくる試合で意地を見せた。

試合後のコメントは以下の通り。

【山田】

-振り返って

うれしいんですけど…ちょっとラッキーが多かったので、複雑です(笑い)。

-勝ち方には納得いっていない

最初だいぶリードされた展開だったので、普段あのままやっていたら負けていたので。まぐれで勝った感じがある。次やる時は1本目からバチバチできるように、もうちょっと調整します。

-久々の実戦だった

復帰1発目で…虹輝とはやりたくなかったです(笑い)。もうちょっと勝って気持ち良くなりたいんで、こんなハイレベルな戦いはしたくなかったです

-その中で勝ち切った

これをバネに、もうちょっと頑張ろうと思います。

-妻子が応援していた

その結果、空回ってましたけどね(笑い)。

-来年へ

来年、東京五輪があると信じて。そこまでしっかりモチベーションをキープして、しっかりメダルを取れるように頑張ります。

【加納】

-振り返って

かなり疲れました、今の1試合で。

-最後は一本勝負でした

一本勝負で負けるのは悔しい。そこまでいって負けてしまうのは。ただ、自分なりのフェンシングはできたかなと思っています。

-新型コロナ禍の中でアップデートできて試合で発揮できたことは

練習時間が少なくなって自分なりに工夫しないといけなかった中で、いろいろ取り組めた。その練習の成果を出せたのかなと思います。負けている時に食らいつけました、しんどいので負けている時は。その中で諦めず、1本1本、食らいついていけた。最初4点リードして、その後、途中で4点リードされて追いついて(一時は14-13と再逆転も敗れ)精神的にも苦しい展開だったかなと思いますけど充実はしてます。

-来年へ

五輪の選考会があって、そして五輪があると思うので、そこで金メダルを取れるように日々精進していきたいと思います。【木下淳】