東京五輪・パラリンピックの新型コロナウイルス対策などを話し合う5者協議が28日、オンラインで開催された。観客上限の判断時期は6月とし、国内のスポーツイベント等における上限規制に準じることを基本とすることで合意した。大会時の選手のコロナ対策をまとめたプレーブック第2版も発表。同時に政府は、選手や大会関係者の出入国や滞在時の防疫措置について、昨年12月に公表した中間整理からさらに強化した対策案を発表した。

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東京五輪・パラリンピックの観客について組織委の橋本聖子会長は3月12日の定例会見で、海外客の受け入れ可否を3月、観客上限を4月に決めると強い意欲を示していた。海外客は発言通り3月末に「断念」を決断したが、国内観客は有言実行とはいかなかった。「4月決定」と言った勢いは「方針」や「方向性」といった言葉に日に日にトーンダウンした。

背景には政府や東京都、国際オリンピック委員会(IOC)など関係団体のさまざまな思惑があった。組織委の武藤敏郎事務総長は5者協議の数日前「皆さんが合意しなければいけない。特に国は観客については厳しい考え方」と話し、4月中の方針決めは「できないかもしれない。その(先送りした)方が良いかもしれないね」と悩ましく語っていた。

緊急事態宣言が発令される中、政府はイベント観客上限に厳しい姿勢を示す。関係者の中には開催を優先するため無観客を早期に決断すべきとの声もある。

一方で都は「当然、観客は入れたい」(都幹部)と無観客は避けたい。無観客なら五輪を開くメリットが激減することに加え、組織委予算に計上されている約900億円のチケット収入が入らなければ組織委が賄えない分を都が補う。税金が財源となるため、それは避けたい。

IOCはトーマス・バッハ会長をはじめ、なるべく粘って大会に近い時期に判断すべきとの考えが根強い。関係者によると事務レベル協議では、無観客にかじを切るのは大会直前でいいと言ってのける事務方もいるという。

これらの思惑がぶつかり合い「上限50%」「無観客」といった具体的な数値を示すことができなかった。【三須一紀】