競泳のシドニー五輪代表から漏れた千葉すず(24=イトマンSS)が12日、都内で記者会見し、日本水泳連盟の選考を不服として国際スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴した心境を公の場で初めて語った。4月の五輪代表選考会女子200メートル自由形で、五輪参加A標準記録を突破して優勝しながら落選したことを不満とし、悔しい胸の内を明かした。提訴状の具体的な内容などの説明は避けた。近日中に日本水連の弁護士と会談する。

千葉が4月23日の日本選手権最終日以来、50日ぶりに報道陣の前に姿を見せた。上下グレーのスーツに黒のシャツで約35分間の会見。詰め掛けたのは約200人で、提訴に対する関心の高さに「ここまでとはびっくりしています」と感想を話す。「提訴することになった以上、自分の口からはっきりコメントした方がいいと思いました。選ばれなくても当然という結果ならいいが、選考に不満がある」。関係者を通じてしか届かなかった千葉の声が、初めて当人の口から明かされた。

記者の質問が長いと「めっちゃ長い……。もう1度お願いします」と笑わせ「今回の選考でだれを恨んでいますか?」との質問には「そのたぐいの質問は苦手です」とかわした。選考方法については「上位2位に入って、五輪A標準を切ったら代表に選ばれるべき」と断言、次の世代の選手のために明確な基準にすることを求めた。

しかし今回は日本水連が選考会前に少数精鋭を打ち出し「五輪A標準を切り、かつ世界と戦える選手」という条件を掲げ、優勝者を自動的に代表としないと明らかにしていた。このことについて千葉は「知りません」と1度は否定しながら「そういうことを言っている人がいることは、なんとなく知っていました」と発言を変更した。この発言からすれば、A標準記録を切っても落選する可能性があるムードを選考会前に感じていたことになり、今までの主張と食い違う。

また、CASの裁定で代表入りが決まった場合、五輪に出るかについては「その時の体調と精神面を考えてから決めます」と話すにとどまった。提訴状の具体的な内容などの説明は避けた。ただ関係者の話を総合すると「選考基準があいまいで落選は納得できない」などの内容となるが、この日の会見では五輪出場への強い意思は示さなかった。全体的にあいまいな発言が目立ち、アピール不足に終わった印象だ。

日本水連の林務専務理事は「会見は千葉の気持ちを発表しただけだから、水連とは無関係。この問題は弁護士に任せている」と話した。近日中にも日本水連役員の上柳敏郎弁護士と千葉が話し合い、両者が仲裁を受けるための同意書にサイン。千葉はサインをもらうまで日本に滞在するという。日本スポーツ界初のCASへの提訴は、裁定が出るまではまだ時間がかかりそうだ。

☆千葉に聞く☆

-提訴した理由は

千葉 200メートル自由形で五輪参加A標準を突破し、優勝したのに選考から漏れた。水連に選考理由の説明を求めたが、個人のことは説明できないと言われ、納得できなかった。説明は欲しいし、すべきと思う。

-日本水連は日本選手権前のコーチ会議や機関誌で、A標準を突破しても世界で戦える選手を選出するとの基準を主張しているが

千葉 そういうことは何となくは知っていました。でも、A標準を突破し優勝して五輪に行けないのは、おかしいと思う。

-競技直後は代表に選ばれると確信したか

千葉 はい、自分ではそう判断しました。何が原因で落ちたか、私が知りたいぐらい。昨年の世界ランクとかは、それぞれだし、やっぱりA標準を突破した上位2人は、自動的に選ばれないと……。

-一部報道によれば、古橋(日本水連)会長はアトランタ五輪の惨敗の原因は、千葉さんの存在と考えているようだが

千葉 何ともいえない。人にはいろんな意見があるから。今回のことには関係ないと思う。ただ、今回の選考には実力以外に何らかの、個人的な意見が少なからず入っていると思う。

-今後、日本水連の言い分は聞くか

千葉 早く同意書にサインしてもらい、CASに判断してもらいたい。

-仲裁の結果、代表に選ばれたら

千葉 今は分からない。その時の体調、精神面と相談して決めたい。今はどちらともいえません。