パナソニック(ホワイトカンファレンス1位)がサントリー(レッドカンファレンス1位)に31-26で競り勝ち、5季ぶり5度目の優勝を果たした。医師の道へ進むため今季限りで現役引退する19年ワールドカップ(W杯)日本代表のWTB福岡堅樹(28)もトライを決めて、有終の美を飾った。03年から18年間続いたTLは今季で幕を閉じ、来年1月から新リーグとしてスタートする。

会場にノーサイドのホーンが響くと、福岡は両手を高々と上げた。青空を見上げ、23年間の競技生活に終止符を打った。仲間らと抱き合い、自身初となる日本一の喜びに浸った。「最後に優勝を勝ち取ることができて、後悔なく次の道へ進める。最高のチームでプレーできたことを誇りに思う」と感謝の言葉を伝えた。

見せ場は、13-0で迎えた前半30分。連続攻撃でSO松田からパスを受けた福岡が、左サイドを駆け上がり、相手2人を振り切って左隅に飛び込んだ。息の合ったコンビプレーで貴重な追加点を挙げた。後半は「アタッキングラグビー」を掲げるサントリーに3トライを許す猛攻を受けたが、規律を守り強みの「堅守」で守り勝った。コロナ禍の影響で、例年以上に稲垣や堀江ら19年W杯代表6人との準備時間が増え、チームの一体感が高まったことも勝因だ。FB野口ら若手も意識の高い代表に刺激を受け、相乗効果が生まれた。

19年W杯、20年東京オリンピック(五輪)を経て医師の道へ-。福岡は当初、このような人生設計を立てていたが五輪延期に伴い、昨年6月に7人制を断念。その背景には、この日会場に駆けつけた歯科医の父綱二郎さん(63)の「自分が後悔しない道を選びなさい」との言葉があった。己の道を進み、競技と並行しながら4月に順大医学部に入学。心身ともに過酷な「二刀流」を貫き、プロ選手として今季14トライと役割も全うした。ディーンズ監督も「類いまれな才能の持ち主であり、そのレガシーはチームに残り続ける」とたたえた。

この日を迎えるにあたり「笑って終わりたい」と常々言っていた28歳のトライゲッター。完璧な終演で競技人生に幕を下ろし、涙することなく、すがすがしい表情でグラウンドに別れを告げた。【峯岸佑樹】