女子テニスの世界ツアーを統括し、選手組合の位置付けでもある女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン最高経営責任者(CEO)は1日(日本時間2日)、香港を含む中国での大会全てを取りやめると発表した。22年の大会日程は、1月に行われる予定の全豪を含むオーストラリアでのツアー大会は発表された。しかし、それ以降は、未定のままだ。

全仏、ウィンブルドンのダブルスに優勝した彭帥(35=中国)が、同国の張高麗元副首相に性的関係を強要され不倫関係であったことを11月2日に自身のSNSで公表。その後、サイモンCEOは「徹底的な公正で透明な調査を求める」と、何度も訴えてきた。

この間、中国の国営放送が彭帥の私生活の映像を公開した。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長も連絡を取り、安全であることを公表。しかし、彭帥自身が生の声を発することはなかった。

サイモンCEOは「彼女の居場所は分かったが、彼女が自由で安全で、脅迫されたり、検閲対象になっていないかどうかは疑問」と、疑念は解消していないことを強調。「このような状況で、WTAの選手を中国でプレーさせるわけにはいかない」と、全ての大会を取りやめることを理事会で決定した。

コロナ禍以前の19年に、中国のツアー大会は2つの最終戦を加え9大会あった。WTAのツアー下部大会が1大会で、WTAは計10大会を管轄していた。その賞金総額だけで約3100万ドル(約34億円)。巨額のマーケットを失っても、WTAは人権の重要性を打ち出し続けている。20、21年は、新型コロナの影響などで、中国の大会は20年1月の1大会しか開かれていない。