【ソルトレークシティー(米ユタ州)5日(日本時間6日)=三須一紀】男子500メートルで森重航(21=専大)が33秒99でW杯初優勝を飾った。33秒台は新浜立也(25=高崎健康福祉大職)に続き日本人2人目の快挙。女子1500メートルでは平昌五輪銀メダルの高木美帆(27=日体大職)が、自身の世界記録にあと0秒16と迫る、1分49秒99で今季のW杯で負けなしの3連勝を果たした。佐藤綾乃(24=ANA)は同種目で自身初の2位に入った。

 

新星が本物になった。森重は「がむしゃらに行かないよう」要所で力を入れた最初の100メートルで自己最高の9秒57をマーク。半径が小さい内側の第1コーナーを無理なく回れるよう、入り口ではコース取りに少し膨らみを持たせた。

冷静かつ賢く-。最終コーナーはアウトコースであることを計算し、バックストレートは逆に全速力。そのスピードを殺さぬコーナーワークで推進力をさらに上げ「本当にびっくりしている」という33秒台の世界に、足を踏み入れた。

10月の全日本距離別選手権で初優勝し「新星」と呼ばれた。本人も「北京五輪の実感は沸かない」と、どこか人ごと。その若者がW杯に入り3度目の表彰台に「昨年の自分からは想像できないけど五輪は自分でも少し意識するようになった」と急成長を遂げている。

出身は北海道の東端、新浜と同じ別海町。スケートのスポーツ少年団も同じだった。畜産と漁業が盛んで人口約1万5000人に対し、飼育されている牛が約12万頭という「人口より牛の数が多い町」から、世界のトップスケーターが生まれた。

「おにぎり持参で一日中、1人でスケートをしているスーパー保育園児がいる」。年長時にスケートを始めた森重はそんな土日の過ごし方が、保育園内でちょっとしたうわさに。スポ少時代の小村茂監督も「のみ込みが早かった」と言うように、自分からどんどん吸収した。

今夏、日本代表の練習で尻を下げ、股関節からの力をしっかりスケートに乗せる滑り方を取り入れた。「今までとは全く違うフォーム」というのに、わずか数カ月で自分のものにし「スタートもラップも速くなった」。

レース後、新浜から「33秒台おめでとう」と祝福を受けたが「新浜さんとはまだ0秒2という大きな差がある」と謙遜気味。それでも同郷の2人が北京五輪で、大きなことをやってのける雰囲気が十分にある。