フィギュアスケート男子の冬季五輪2連覇王者、羽生結弦(27=ANA)が164日ぶりに公の場に姿を見せた。

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22年北京五輪の代表最終選考会を兼ねた全日本選手権(23~26日、さいたまスーパーアリーナ)の開会式・抽選会に出席。252日ぶりの競技参加となる24日のショートプログラム(SP)は32人中24番目の出番に決まった。公式練習は欠席したが、先月の右足関節靱帯(じんたい)損傷からの復活は証明した。

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羽生は元気そうだった。今年7月11日のアイスショー最終日以来の姿。もちろん11月に右足首を痛めてからは初めてだ。公式練習は欠席したが、約3時間後の開会式には出席。濃紺スーツに藤色のネクタイで決めて、足取りも確かに決戦の地へ入った。同じ仙台市出身の佐藤駿が選手宣誓すると、その右足に力を入れて真っ先に立ち上がる。女子の横井が抽選で笑いを取ると肩を揺らして喜んだ。笑顔で全日本に帰ってきた。

2大会連続6度目の優勝へ。前回王者として1番くじを引くと、右手で24番をつかむ。うなずいた。24日のSPは午後7時42分ごろ演技をすると決まった。今年4月16日の世界国別対抗戦(大阪)フリー以来252日ぶりの公式戦となる。

氷には乗らなかったため取材対応はなかったが、抽選会後、日本連盟ツイッターを通じてコメントした。

「明日から全日本選手権が始まります。僕も全力で、しっかりと丁寧に、すべてを感じながら演技をしていきます。どうか応援よろしくお願いします」

4年に1度、今季の全日本は北京五輪の代表最終選考会を兼ねる。まだ目指すか明言していないものの、たった1度の転倒で痛めたという古傷を治し、表舞台に出てきた。3連覇が懸かる五輪のシーズン初戦。23日の公式練習は参加する。24日にSPを、最終日の26日にフリーを迎える。その先、冬季大会94年ぶりの3連覇が懸かる五輪への道はどうするのか。発言も成績も期待される中で、仮に欠場しても実績で選出される可能性がある中で、出場を決めた。心境の変化も含めてより言動が注目される。

今季もコロナ禍で拠点のカナダには戻らず、国内で調整してきた。4年前の平昌五輪前も右足首を負傷。全日本は欠場したが、実績で代表入りし、ぶっつけ本番で2連覇を遂げた。その前13年は今回と同じさいたまで日本一になり、ソチ五輪切符をつかみ、初の金メダル獲得につながった。今回もドラマの予感は漂う。

公式練習での披露がお預けとなった新SPは? 負傷後の経過は? 世界初成功を目指すクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)の習得状況は? そして北京への思いは-。ベールに包まれていた近況が、この4年間の最後に出す答えが、日本最高峰の大会を通じて明らかになる。【木下淳】

◆羽生の今季経過◆

▼6月29日 ISUがGPシリーズ全6戦の出場選手を発表。第4戦NHK杯(11月12~14日、東京)と第6戦ロシア杯(同26~28日、ソチ)にエントリー。

▼7月9日 アイスショー「ドリーム・オン・アイス」に出演。北京五輪へ「平昌シーズンみたいに『絶対に金メダル取りたい』という気持ちは特にありません」「ただ、『必ず今季は4回転半を決めるんだ』という強い意志はあります」

▼10月18日 GPシリーズを中継するテレビ朝日を通じてコメントを発表。ボードに「できること、一つずつ。」と記し「一番の目標は4回転半を成功させたいということ。そこに向かって今、全神経と全気力を使ってる感じです」

▼11月4日 右足関節靱帯損傷のためNHK杯を欠場すると発表。「たった一度の転倒で、怪我(けが)をしてしまい、とても悔しく思っています」と状況を説明した上で「競技レベルに戻るまでの期間をなるべく短くできるように、努力していきます」

▼同17日 右足首の回復が遅れ、ロシア杯も欠場すると発表。「動きによっては痛みが出てしまいますが、日常生活では、痛みの影響がなくなってきました」。日本スケート連盟の竹内洋輔フィギュア強化部長は「しっかり回復してくれれば競技力を戻してくれると信じている」

▼11月27日 日本スケート連盟が全日本選手権のエントリー選手を発表し、男子32人の中に名を連ねる。