体操男子で五輪個人総合2連覇の内村航平(33=ジョイカル)が11日、現役引退を発表した。近年は両肩痛に苦しみ、20年2月からは種目別の鉄棒に専念。4度目の五輪を迎えた東京五輪では落下が響き、予選落ちしていた。

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内村を貫いてきたものは「変えない力」だ。

例えば、「まねしない方が良いですよ」と子どもたちに言う食生活。1日1食で夜のみ。そして極度の偏食で野菜はほぼ食べない。

例えば、練習方法。19年2月には中国で同国の代表と合同練習を行った。目にしたのは筋トレにも励む姿だが、「トレーナーが背中を使う意識をさせていると言っていましたが、僕は6年前から気付いていて、やっていた」と動じない。

情報があふれる現代。スポーツを問わず、変化こそ進化という見方もある中でなぜ? 「性格ですね。信じないです。いろんなことを信じないんです」

その理由に自負がある。

「『これいいよ』と言われても信じない。例えば、このサプリを飲んだら次の日に疲れが取れるとかには、『それぐらいの運動しかしてないからだろ』と。本当に追い込んだ時は何しても疲れますから。そんな魔法の薬があったらやっている。ご飯も『3食を食べたら、最後まで持ちますよ』と言われますが、それならみんなやっている。自分が良いと思うものを、試さなくてもわかるんです」

考え抜き、成功体験を蓄積してきたからこそ、揺らがない。「単純な事を人一倍やってきた」。それこそが原動力だった。

もちろん、自分に合う手法を他人には強要したことはない。むしろ、特殊だと理解している。ただ、誰よりもプロセスを結果で証明してきたからこそ、貫けた。それが誇りでもあった。

「もともと九州男児って頑固なんですよ(笑い)。おやじもめちゃくちゃ頑固で、受け継いだんです」

笑顔で出自を説いたが、その固い意志こそ、強さだった。【阿部健吾】