マリ共和国出身のムードメーカーが、コートで自分を表現する。Wリーグ・アランマーレ秋田は19、20日、愛知・豊田市内でトヨタ紡織と対戦する。コナテ・カディジャ(23)はコンディションが整わず、欠場が続いたが、1月上旬の初出場から徐々にプレータイムを伸ばしている。1月には同年代のライバルが合流。出場争いが激化する中、少しでも長くコートに立ち、勝利に貢献する。

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1月8日山梨戦の第3クオーター中盤。カディジャが、今季初めてアランマーレ秋田のユニホーム姿でコートに入った。アイシンAW(現アイシン)在籍の17-18シーズン以来となる公式戦で、同Q終盤にはゴール左からジャンプシュートを成功。約6分半で4得点を挙げて初出場を終えた。「シュートは決めようと心の中で決めていました。達成できたことが何よりもうれしかったです」と笑みを浮かべた。

小学生の時に西アフリカのマリ共和国から来日。全国屈指の強豪・桜花学園(愛知)3年時は3冠(全国高校総体、国体、全国選手権)を経験した。卒業後はアイシンAWに1年半在籍。昨年4月に「もう1回バスケットがしたいと思ってチャレンジするという気持ちで来ました」と決心して秋田に加入した。チームでは数少ないWリーグ経験者で、当時はチーム最長の180センチ。ゴール下での活躍を期待されたが、加入から間もなく膝を負傷。幸先の良いスタートはできなかった。

10月の開幕にはコンディションが間に合わず、以降も連敗中のチームを助けられない日々。それでも腐らないで少しずつ状態を高めていった。

カディジャ コンディションが上がらなくてつらい時は、小嶋(裕二三)ヘッドコーチの「お前はもう1度バスケがしたくてこっちに戻ってきたんだろう?」という言葉を思い出してここまで来ることができました。

山梨戦からはこれまで5試合中4試合に出場。プレータイムも伸び、1月23日のシャンソン化粧品戦は約15分間、コートに立ち実戦経験を積んだ。

親友でもあるライバルの加入に心は燃えている。同じセンターで190センチのセネガル人、ニアン・ンディ・クンバ(23=日本経大)が1月からアーリーエントリーで合流。カディジャは「同じアフリカ出身でフランス語で話せる。高校の時から友達で連絡を取っていた仲なので、本当にうれしかったです」。10センチも背が高いクンバと出場機会を争うことになったが、「自分より身長が高い選手がいなかったので、高い選手に対してどう攻めたらいいのかを練習からイメージできる」と、前向きに受け止めている。

新規参入初年度の今季は20試合で1勝19敗。残りは4試合となった。復帰から唯一出場できなかった試合は1月15日。初勝利を収めた東京羽田戦だった。その日は勝利が見えた終盤、ベンチで祈るように手を合わせて戦う仲間に視線を送り、勝利の瞬間は跳びはねて喜んだが、本心は違った。

カディジャ (勝利は)うれしかったけど、悔しい思いが大きかった。このチームに来て試合に出る時間は少なかったけど、みんなで目指そうという1勝に自分は出られるチャンスがなかった。コートに立てたら、もっと違う喜びや感覚もあったと思うんですけど。試合に出ていないから複雑な気持ちでした。

初勝利から現在3連敗。再び白星から遠のいている。全体練習にも参加し、自分の立場や役割は十分理解している。

カディジャ 自分と同じポジションの選手や新人のクンバは自分より、プレータイムが長い。自分が出た一瞬をどれだけ大事にして相手に勝てるか、ミスなくできるかを目標にしたいです。リバウンドの部分やゴール下で激しくディフェンスとオフェンスを頑張りたいです。

「人生で一番勉強しました(笑い)」と上手な日本語で取材に対応し、言葉に思いと熱を込めた。好きな言葉は「一期一会」だ。再び歩み始めた競技人生-。バスケができる喜びを感じながら、支えてくれる人に勝利で恩返しする。【相沢孔志】

◆コナテ・カディジャ 1998年11月26日生まれ、マリ共和国出身。小学生の時に来日。石神井中-桜花学園。17年にアイシンAW(現アイシン)に入団。18年に同退団。21年にアランマーレ秋田入団。180センチ。ポジションはセンター。コートネームはアドゥ。