寺本2世の誕生だ。日本を10年以上引っ張ってきた寺本明日香が引退した今大会で、同門の笠原有彩(17=レジックスポーツ)が、予選3位から予選と決勝の合計106.230点で初優勝を遂げた。高校生の優勝は、13年笹田夏実以来9年ぶりとなった。

24年パリ五輪に向けた新たな1歩を、笠原が寺本から受け継いだ。新年度の再出発で、多くの選手がミスを続出する中、予選、決勝の2日間、ほとんどノーミスの演技。「緊張したが、楽しもうと、自分の演技を堂々とできた」と、笑みがはじけた。

予選3位から、この日の1種目目、跳馬で着地がやや動き、4位に下がった。しかし、続く段違い平行棒、平均台で、同組の上位選手が落下の連続。その中で「思い切ってやって失敗したら練習が足りなかったと思えばいい」と、肝が据わった。ミスなく演技し逆転した。

この日の試合前に、先輩寺本から「楽しんで演技してきてね」と言われ、「やっぱり楽しむことが1番」と、心がほぐれ、思い切りにつながった。寺本と同じ名経大市邨高の3年生で、練習拠点も同じレジックスポーツだ。

10月開幕の世界選手権(英国リバプール)に向け、初代表へ大きく前進した。「世界や五輪の代表になるのが目標」。今回は、跳馬で予定していた2回ひねりを1回ひねりで抑えた。「NHK杯(5月)では2回ひねりを決めたい」。寺本に加え、東京五輪銅メダルの村上茉愛、同代表の畠田瞳らが抜けた日本女子で、まずは笠原が抜け出した。

世界選手権の代表は5人。この日の決勝で戦った24人が5月14日開幕のNHK杯(東京体育館)に出場。今大会とNHK杯の合計得点上位3人が代表に決まり、残り2人は全日本種目別終了時点の貢献度で選ばれる。