昨夏の東京オリンピック(五輪)銅メダルの渡辺勇大(25)、東野有紗(26)組(BIPROGY)は初優勝を逃した。

世界ランキング3位の“ワタガシペア”は、東京五輪銀メダルで同2位の鄭思維、黄雅瓊組(中国)組に敗れて銀メダル。日本勢として初の混合ダブルス優勝はならならなかった。

決勝では相手との実力差を痛感させられた。懸命に食らいつこうとした場面もあったが、あっさり振り切られた。東野は「自分の仕事という意味では、きょうは全然駄目だった」と涙を浮かべた。

最後に悔しさを味わったが、成長を感じさせる大会にもなった。

東京五輪では日本勢唯一の表彰台となる銅メダルを獲得した。その価値を実感する一方で、準決勝で敗れた悔しさも忘れなかった。東野は「東京五輪では緊張や重圧で、自分たちのプレーをなかなか出せなかった」と振り返る。

その悔しさをバネに東野が強化してきたのがレシーブだった。混合ダブルスではどうしても、相手ペアから女子選手が狙われる。取り組んだのが、男子選手が繰り出す威力あるスマッシュを単純に返すだけではなく、自分たちの攻撃へと転じるための返球。ラケットを下から出すのではなく、上から強く打ち返して相手を崩すことを心がけてきた。

成果は形になって表れてきた。今大会中に東野は、「ドライブや浮き球に対して、攻撃の形をつくることはできているのでは」と手応えを口にした。それでも決勝では思うようにプレーをさせてもらえず、「もっともっと練習が必要」。今大会で得たすべてを糧としていく。

決勝で戦った相手とは大きな実力差があることは、渡辺も認めた。その上で、「ここまでボコボコにされてしまったので、これ以下はない。これからどう伸びていくのかという意味では、僕らもすごく楽しみ」と前を向いた。

中学時代からコンビを組み、今年で結成11年目。世界選手権では19年銅メダル、21年銀メダル。そして今大会でも再び銀メダルを手にした。24年パリ五輪で頂点に立つべく、さらに成長を遂げていく。【奥岡幹浩】