3月の世界選手権金メダルの宇野昌磨(トヨタ自動車)が、世界初の4回転半ジャンパーとの練習から、新たな目標を見いだした。

「1つの練習でも今季、自分が何を目指すべきか、そこに目標があった気がして。うれしくて、今年1年も頑張れそうだなと思えて安心しました」。

公式練習で共にしたイリア・マリニン(17=米国)について聞かれると、弾むように答えた。

9月の国際大会でクワッドアクセル(4回転半)を成功させた17歳。フリー曲をかけての滑りでは、6種類7本の4回転ジャンプを着氷させる、異次元の構成を披露していた。

そのジャンプの数々。

「アクセルはすごくうまいこと知ってたんですけど、今日のフリーの構成も見ました。すべてのジャンプが安定して質よく跳んでいたことに刺激を受けました」。

4回転半は「現実的ではない」という。目標に定めたのは、自分も跳んでいる他の4回転ジャンプ。

「高いですし、力が入ってない。けがしにくいジャンプをしていた。柔軟性もあるんだろうな。けがが難しくなってきます、4回転が増えると。たくさん練習すればするほどリスクも上がるので。毎回同じジャンプを跳べている。ほぼ完成されたジャンプを跳んでいるのが、僕から見てすごい」。

「現時点でマリニン君の方が安定してクオリティーが高い。見た時に、1年かけてあそこまで持っていきたいなと」

これまで、ライバルたちの姿を成長の糧にしてきた。北京五輪金メダルのネーサン・チェン、五輪2連覇の羽生結弦。彼らは今季の競技会の氷上にはいない。オフ期も具体的な目標を掲げるより、できないことをできるようにする作業を繰り返してきたが、この日の練習で、一気に具体的な像が結ばれた。それがマリニンだった。

「やはり、こうやって現れるんだな」。

それがうれしい。ずっと、そうやって強くなってきた。