4年ぶりの出場となる世界女王の坂本花織(22=シスメックス)が、不調の中でも全力を尽くす。昨季は出場権を得ながらも、コロナ禍で大会が中止。会場での練習を終えると「氷の感触は良かったし、滑りやすかった」と口にした上で「コンディションは伸び悩んでいるというか…。『今シーズン、そういう感じなのかな?』という感じです」と声のトーンを落とした。

悩みの種は練習での消化不良にある。GP第5戦NHK杯(札幌)後にモチベーションは上がったが、気持ちが内容につながらない。

「結構頑張っていたんですけれど、どうも上がりきらないというか…。調子が…。エンジンだけかかっている状態。マジで、もう『スコーンッ、スコーンッ』。そんな感じなんで『頼むからやってくれ』って、自分でも思う感じです」

要因は得点源となるフリップ-トーループの連続3回転。持ち味である幅のあるジャンプを意識するが、腕が先行して振り回す形となり、上半身と下半身が連動しないという。「シンプルに跳び上がって、締めることができていないのが不安要素だし『できていないな』と思います」。練習に自信を持てないまま、トリノ入りすることになった。

それでも9日(日本時間10日)にはショートプログラム(SP)がやってくる。現状を受け止め、冷静な口調で意気込んだ。

「とにかくこのファイナルはGPシリーズの最後なので、今、できることをやり切りたい。全日本(選手権)でいい演技ができるように、そういう試合になればいいなと思います」

順位よりも内容にこだわり、浮上のきっかけをつかむ。(トリノ=松本航)