初出場を果たした山本草太(22=中京大)が、安定感抜群のSPを、スケート人生が始まるきっかけとなった土地でも披露した。

「ショートでずっとノーミスできているので、自分でもびっくりです」。

今季は大きなミスなく演じ続けてきた「イエスタデイ」。2季目を迎えるプログラムは「ケガの経験だったり、いろんな苦しい経験を、払いのける、それでも前に進んでいく気持ちを込めている」。この日も、そんな姿をリンクに乗せた。

冒頭のトーループの4回転-3回転から、続く4回転サルコーへ。どちらも、失敗するイメージを見る者に抱かせないような滑らかさを持った跳躍だった。

得点は94・86点で2位発進。「練習でも全然失敗ありますし、自分としては必死なんですけど、必死に考えながらできているからこそ、ここまでノーミスを繰り返せているのは成長した部分だな」。世界のトップ6人しか出場できない大会でも、変わらぬ滑りができた。

前日の公式練習時、会場内の五輪マークを写真に撮り、大切にスマートフォンのアルバムにしまった。06年トリノ五輪。フィギュアスケートが大好きだった母と一緒にテレビで観戦した時。表彰式でプルシェンコが金メダルを首からかける姿を見て「僕、やりたい! 金メダルほしい!」と望んだ。それがきっかけで大阪府内のリンクに通いだし、スケーターとしての道が始まった。

プログラムで示す、困難を払いのけて前に進む姿。五輪出場を目指した道のりは、一度は途切れそうになった。16年3月の練習中に右足首を骨折し、その後の再骨折などが重なり、3度の手術を行った。いまも患部にはボルトが3本埋め込まれている。長い期間をかけたリハビリ、そして地道な努力が、五輪の金メダルを目指した道をつなぎ、いまがある。

あらためて、その始まりを思い返せた場所。「ショートでいい点数をとって貯金を持ってフリーに臨めるのがファイナルに来られている要因。しっかりフリーも自信を持って臨んでいきたい」。見る側から滑る側へ。特別なリンクで、滑り抜く。