2022年の「植村直己冒険賞」が6日、都内で発表され、札幌市在住の野村良太氏(28)が受賞した。積雪期に北海道最北端の宗谷岬から南端の襟裳岬までの山岳ルート(宗谷丘陵、北見山地、石狩山地、日高山脈)を単独で一つなぎに踏破する「北海道分水嶺積雪期単独縦断」に、史上初めて達成したことが評価された。

コースを何回かに分けての到達者はいたが、一つなぎでの踏破は単独、パーティーともになしえた者がおらず、国内に残る最難関のルートとされていた。全行程は約670キロ。野村氏は昨年2月26日に宗谷岬を出発。ほとんど山道が整備されていない冬の山岳を、最大45キロのザックを背負って縦断。ホワイトアウトや風速40メートルの猛吹雪を乗り越えて、同4月29日に襟裳岬に到着した。

北海道大ワンダーフォーゲル部で登山を始めた野村氏は、21年にも同ルートに挑んだが撤退。再挑戦は失敗の経験を生かして日程や食料など綿密な計画を立てて臨んだという。「北海道大で登山に出会った自分にとって北海道の山々は思い入れが強い。その山々を一つなぎで縦断する。こんなにロマンのある経験はない。うまくいく確率は30~40%がせいぜいだと思ってスタートした」。

ふだんは札幌市を起点に山岳ガイドをしている。「次にどういう方向に進むか考えるタイミングにきていると思う。再来月にはヒマラヤへの遠征を計画している。初めての海外登山。そこで自分の体がどんな反応を示すか、何を感じるのかとても楽しみ」。28歳の野村さんの冒険人生は、まだ始まったばかりだ。【首藤正徳】