14年ソチ、18年平昌オリンピック(五輪)2連覇王者で、昨夏プロ転向した羽生結弦さん(28)のスケーター史上初となる東京ドーム単独アイスショーを完遂した。

公演後の囲み取材では、プラチナチケットで会場を埋め尽くした約3万5000人と相対した感想を口にした。

-きょう選んだプログラムは全ての積み重ねが、夢と関連づけられているんですか

羽生さん それぞれのプログラムたちって、やっぱり、それぞれ違う意味を持っていて、本来は「ギフト」っていう物語とは全く関係のないプログラムたちなんですよね。ただ、今回の「ギフト」っていう物語の中にこのプログラムたちが入ることによって、もしくはその演出たちとともにこのプログラムがあることによって、また新しい意味をつけられるんではないかなということを考えて滑りました。何か、フィギュアスケートってもちろん歌詞があるプログラムももちろんありますし。だけど、言葉のない身体表現だからこそ、受け手の方々がいろんなことを感じることができるっていうのがフィギュアスケートの醍醐味かなって思ってて、だからこそ、物語を作って、その物語の中の1つのピースとして、プログラムが見られた時に、どんなことを皆さん受け取ってくださるかなっていうことを考えながら、プログラムを構成していきました。

-ちょっと(記者には)想像できないんですが、率直に3万5000人の視線を浴びて、そのパワーと対峙(たいじ)するということはどのようなものでしたか。今日という日の経験は、今後の羽生さんにとってどう生きていきそうですか

羽生さん 正直、この会場に入った時に思ったことは「自分って何てちっぽけな人間なんだろう」っていうことでした。やっぱりフィギュアスケートって、本当に1人の人間、もしくは2人の人間がやるスポーツですし。それを表現としてアートとして作り上げていくっていうことも、もちろん大事ですけど。まずは、僕ら男子シングルなんで、男子シングルのスポーツ選手としてやる時に、本当にちっぽけな人間だなと。ただ、その3万5000人の方々、そして、この空間全体を使った演出をしてくださった皆さんの力を借りたからこそ、ちっぽけな人間だったとしても、いろんな力が皆さんに届いたんじゃないかなっていう気は、ちょっとしてるんですね。だから、ある意味では震災の時に、1人1人だったらきっと何もできなかったなっていう記憶とちょっと似てて、皆さんの力がやっぱり羽生結弦っていう1つの存在に対して、いっぱい集まったからこそ、絆があったからこそ、進めた力が伝えられた公演だったんじゃないかなって思います。【阿部健吾】