6・9、“厳選サバイバル合宿”スタート-。9月8日開幕のラグビーW杯フランス大会に向け、日本代表ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC、53)が6日、都内で23年の活動会見に臨んだ。

5月20日のリーグワン決勝後は選手に休養を与え、6月9日から約45人の厳選した代表候補メンバーで「ジャンボジェット」に例えた国内合宿を開始。開幕まであと半年となる今月8日を前に、19年日本大会の8強を超える目標達成へ、闘志を燃やした。

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半年後のW杯へ、ジョセフHCは真剣な表情を崩さなかった。現在はリーグワンを視察。2月には試合がない週に候補選手とのミーティング合宿を実施した。すでにW杯前に臨む6試合も発表されており「(事前)合宿に関してはジャンボジェットと例えている。6~7月で機体を少しずつ上昇させたい」と見据えた。

「ジャンボジェット」の座席は限られる。最終的なW杯登録メンバーは33人。その“定員”を目指すサバイバルは激化する。昨年は春が63人、秋が52人の代表候補で始動。新型コロナ陽性者が出た際の対策もあったが、日本も制限が緩和されてきた。6月9日開始の国内合宿から4週後の7月8日には、オールブラックスXV戦が予定され「効率よくしていくことが重要。(これまでと)違ったチャレンジ。45~46人の選手を集め、最終的に(試合に)23人が出る。(規模が)小さい方が選手は試合をたくさんできる」と説明した。

当落線上の選手はリーグワンでのアピールが不可欠だ。4年前に多くが国際経験を積んだスーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」は消滅。昨年は大所帯で代表活動を行い、格下ウルグアイ戦などで若手が経験を積んだ。だがメンバーを厳選する今年は、リーグワン閉幕後に休養期間を設定した上で始動。この日、ジョセフHCが「素晴らしい」と言及したのもW杯3大会連続出場のリーチ・マイケル(BL東京)、プロップ稲垣啓太らで構成される埼玉のFW第1列という“実績組”だけにとどまった。

昨秋の欧州遠征では、W杯1次リーグ同組のイングランドに13-52で敗れた。敗戦を糧に、戦術面の鍵にはスクラムなどの「セットピース」、「キックでの攻防」、「防御」を掲げる。指揮官は「19年の成功は私だけで成し遂げたことではない。しっかりとファーストステップを踏み、そこからW杯に向けて選手がピークを迎えられるようにしないといけない」と逆算した。8強の壁越えへ、ジャンボジェットは選ばれし者だけを乗せて、決戦の地へ飛び立つ。【松本航】

○…日本と同じW杯1次リーグD組のライバルも、状況に変化がある。2戦目でぶつかるイングランドは、昨年12月に元日本代表HCのエディー・ジョーンズ監督を解任。スティーブ・ボーズウィック氏がアシスタントコーチから昇格した。現在2勝1敗の欧州6カ国対抗では、司令塔ファレル主将をCTBからSOに配置転換するなど模索しており、日本のジョセフHCは「チームのやりたいことは見ていて分かる。相手の攻撃もある程度、予測はついている」と動向を見つめる。

昨秋にイングランドを13年ぶりに下したアルゼンチンは、夏の南半球4カ国対抗から強化が本格化。サモアとはW杯前のパシフィックネーションズカップが前哨戦となり、同HCは「貴重な経験になる」とした。

○…優勝争いは熾烈(しれつ)だ。世界ランク1位のアイルランドは37歳のSOセクストンを中心に安定感があり、開催国で同2位フランスは世界的SHデュポンを中心に昨年はテストマッチ無敗。南半球の王国ニュージーランドは昨年の低迷から浮上を目指している。イングランド前監督のジョーンズ氏は今年からオーストラリアを率い、2連覇を狙う南アフリカも優勝候補。リーグワン横浜の同国代表SHデクラークは3日の試合後に「ここでいいプレーをしたら、メンバー入りの可能性がある」と意気込むなど、他国でも代表争いが繰り広げられている。