ペア初優勝でグランプリ(GP)ファイナル、4大陸選手権と合わせた日本初の年間グランドスラム達成となる三浦璃来(21)、木原龍一(30)組(木下グループ)が首位発進した。SP今季世界最高で自己ベスト80・72点を記録し、前回王者の2位クニエリム、フレイジャー組(米国)と6・08点差。演技前にWBCで3大会ぶりに優勝した侍ジャパンの決勝をテレビ観戦し、刺激を力に変えた。フリーは23日に行われる。

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三浦は叫ばずにいられなかった。静まり返った会場に「キャ~!」という声が響き、観衆からの笑いが漏れた。モニターで初の80点台を確認。それは場内へアナウンスが流れる前だった。「『うれしいな』っていうのが爆発した。フライングは知りませんでした」。とにかくうれしかった。

練習通りの出来だった。中盤のリフト、スロー3回転ルッツを決めると、スピンをピタリとそろえた。演技構成点はスケート技術など3項目全てで、10点満点の9点台。演技前には中日ファンの木原に導かれるように、2人でWBCを観戦した。演技から逆算してコンビニへ食事の買い出しに走り、優勝の瞬間は見られなかった。それでも愛知・中京大中京高出身で、高橋宏斗投手(20=中日)の先輩にあたる木原は「勇気をいただいた。『次は自分たちの番』と勝手に思ってやりました」とほほえんだ。

ウクライナ侵攻の影響により、強豪ロシア勢が出場できていない今大会。SP80点台は昨年の北京五輪金メダリスト隋文静、韓聡組(中国)、ロシア勢3組に続く5組目の快挙となった。木原は「はるかに上の方々。少し足元が見えてきた」と成長を実感し、前回王者の米国ペアと6・08点差。日本ペア初となる優勝、全種目で日本勢初めての年間グランドスラムが、くっきりと見えた。【松本航】