五輪金メダリストが、小学生相手に本気になった。

21年東京五輪(オリンピック)の卓球で金、銀、銅メダルを獲得した伊藤美誠(22=スターツ)が29日、東京・三鷹市の第六小学校を訪問した。

24日に卒業式を終えた6年生106人と交流。6年生は5年時の授業で東京五輪・パラリンピックのレガシーについて継続的に考え、その延長で昨年5月に「会いたいアスリート」として名前が挙がった5選手へ手紙を送っていた。

数十通を受け取った伊藤は「初めて大勢の方に一気にいただいた。それも誰1人(内容が)簡単な方がいなかった。しっかり書いてくれていた」と喜び、「この1年間で何回か『会えないかな?』と提案させてもらっていた。やっと念願がかなって、うれしいです」とTリーグ閉幕と国際大会の合間を縫って足を運んだ。

イベント内ではトークはもちろん、約1年半ぶりに開けたという東京五輪の3つのメダルも披露。ニッタクとの共同事業で同社の卓球台も寄贈した。

その後は早速、卓球台を使い、伊藤とのじゃんけんで勝ち上がった児童と交流。伊藤は1人目から「本気でいくよ」と鋭いサーブやスマッシュを打ち込み、児童は空振りの連続だった。「無理~!」「手も足も出ない」という声が響いた。

向き合う児童のレベルに合わせることもできるが、伊藤はあえて「本気」でラケットを振った。その理由はイベント後に明かした。

「今日の子たちは多分『ガチ』が欲しくて(笑い)。本当に『本気が欲しいんだろうな』と思いました。選択肢の中にラリー、サーブ、スマッシュがあったんですよ。21人全員がスマッシュかサーブ。普段の試合を見ていて、本気のサーブやスマッシュを受けたい(と思ってくれる)子たちって、すごいうれしいんですよ。『ラリーをしたい』という気持ちも思い出になるから分かるんですけど、ラリーよりかは、試合で見ている私を見てほしい気持ちもある。それはすごくうれしかったです。自分も本気でやりました。みんな思い出になってくれて、良かったです」

小学生の手紙がきっかけとなり、実現した交流。24年パリ五輪代表選考レースは同年1月まで続く。過密日程をこなす伊藤も「(活力が)満タンになった気がします」と小学生からパワーをもらった。【松本航】