19歳の世界女王、藤波朱理(あかり、日体大2年)が優勝で連勝記録を「119」に伸ばし“霊長類最強女子”に肩を並べた。17年9月から116連勝で大会を迎え、準々決勝、準決勝と決勝で3勝。同じ階級でオリンピック(五輪)3連覇の吉田沙保里が01~08年に積み上げた公式戦の119連勝に並んだ。「無敗のまま金メダル」を狙う24年パリ五輪へ勢いを増した。

藤波が吉田の記録に追いついた。“シン・霊長類最強女子”へ119連勝。五輪V3女王より8センチ高い長身のため「腰高にならないよう」心掛ける低い構えから、長いリーチを伸ばして片足タックルを重ねる。決勝はインド選手に10-0。第1ピリオド2分48秒のテクニカル(T)フォール勝ちに笑顔すら見せず、日体大コーチでセコンドに付く父俊一さんとも軽い握手だけ。表彰式後に応じた父子の撮影でようやく笑った。

日本協会公認の連勝記録は、中学2年の全日本女子オープン選手権(48キロ級)から続く。負けも分けもなく積み重ねた白星。21年の世界選手権では全4試合Tフォール勝ち&無失点という無類の強さで、史上5人目の高校生女王になった。

昨年6月には明治杯を2連覇し、決勝で節目の100連勝に到達。今年も2つの国際大会を制して116へ伸ばし、同じ三重県の先輩で「憧れ。だけど雲の上の存在」吉田の記録に並ぶ快挙に王手をかけていた。

注目される連勝だが「マットに上がれば過去のこと」と意に介さない。吉田の記録には04年アテネ五輪などが含まれる一方、自身は国内の中高時代が多いと自覚。比較する気もないが、結果は実力を裏付ける。この日も準決勝で東京五輪銅メダルのモンゴル選手を10-0で一蹴し、無失点試合を29に伸ばした。国内序列も、東京金の志土地(旧姓向田)真優をリードする。

次は、五輪4連覇の伊調馨が打ち立てた189連勝を期待されるだろう。その伊調と普段練習している19歳の新女王が見据えるは、来夏の夢舞台。9月の世界選手権(ベオグラード)出場権を獲得して3位以内に入ればパリ五輪代表に内定する。「無敗でパリまで行って金メダルを取りたい」と公言する目標へ、今の数字など通過点でしかない。【木下淳】

日本協会を通じて出した優勝コメントは次の通り。

「明治杯につながる試合ができたと思います。この経験を、これからに生かしていきたいです。(勝因は)自分のレスリングをできたことです。(今後の目標は)まず(6月の)明治杯で優勝し、世界選手権でも優勝してオリンピック代表内定することです。(連勝記録について)沙保里さんは雲の上の存在です。連勝記録は同じでも、まだまだ足元にも及んでいません」

◆藤波朱理(ふじなみ・あかり)2003年(平15)11月11日、三重県四日市市生まれ。88年ソウル五輪代表候補だった父俊一コーチの影響で4歳から競技を始める。中学2年の全国大会(17年6月)決勝で伊藤海に負けて以来、全勝。いなべ総合学園高から昨春、日体大へ。総合格闘家の兄勇飛(26)も元選手で17年の世界選手権男子フリースタイル70キロ級3位。大学の同じクラスには北京五輪スノーボード日本代表の三木つばきがいる。164センチ。

○…この日は女子5階級が行われ、五輪で実施される57キロ級では南條早映(東新住建)も金メダルを獲得した。決勝でウズベキスタン選手を11-4で破った。同62キロ級では、昨年の世界選手権で優勝した尾崎野乃香(慶応大)が敗れる波乱。準決勝でキルギス代表に2-2の内容差で屈したものの、切り替えて維持の銅メダルは獲得。ウズベキスタン選手を2-0で下した。