日本代表の村元哉中(30)高橋大輔(37)組(関大KFSC)が、自己ベストを更新する116・63点をマークし、今季を有終の美で締めくくった。前日4位だったリズムダンス(RD)との合計195・01点も自己最高スコアを上回った。

2人でミュージカル「オペラ座の怪人」の世界観にのめり込み、怪人とヒロイン(クリスティーヌ)の感情を表現していった。息の合った滑りに、力強いリフト、そして速さ。最後まで情感あふれる演技で、見る者を魅了した。演技を終えると、スタンドは総立ちで、今季の集大成の演技をたたえた。

高橋にとっては、シングル時代の2007年の世界選手権で日本男子初の表彰台となる銀メダルを手にした会場が東京体育館。さらに、当時のフリーも「オペラ座の怪人」だった。「もう絶対的にいい思い出にしたいっていう気持ちは強かった。哉中ちゃんと2人でアイスダンサーとして演技したんですけれども、本当に自分にとっては最高の思い出になる演技ができて、すごくよかったです!」。運命的な出来事に声が弾んだ。

村元はこの日の午前練習後に、その07年の高橋の演技の動画を見返したという。「すごい見たくなったので。見た中での今回のフリーだったんですけど、本当にあれから16年ですよね。色々感動してました。本当に幸せな4分間でした」と2人で作り上げた作品を振り返った。

今大会のリンクサイドに臨時で立っているのは長光歌子コーチという縁もあった。米国に戻っているズエワ・コーチの勧めで、シングル時代の高橋の恩師に打診し、快諾された。会場だけでなく、当時、周囲で支えてくれた人もそばにいた。

16年の時を経て、今度はアイスダンサーとして、そして村元と2人で。1つの運命を結実させる今季最終戦となった。

高橋は今後について、「(チームの)応援に全力を費やして、その後、ゆっくり、ちょっと考えれたらいいなっていう風に思ってます」と述べた。いまは、全力を出し切った高揚感に浸る。【阿部健吾】