リーグ2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(東京ベイ)が悲願の初優勝を飾った。

同1位で2連覇を狙った埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉)に17-15で勝利。トップイーストリーグ(2部)時代の12年に入団した元日本代表CTB立川理道主将(33)が「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」を獲得した。

南アフリカ出身のフラン・ルディケ・ヘッドコーチ(HC、55)と7季目のコンビで昨季3位から躍進。チームのファン「オレンジアーミー」とともに、創設45年で頂点に立った。

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これが信じてきた道だった。

東京ベイが3点を追う後半29分、立川は「ハルさん!」と自身を呼ぶ声を聞いた。相手陣でのチャンス。左大外を見ると、入団2年目のWTB木田晴斗がいた。

右足でふわりと相手防御裏へ浮かせ、捕球した木田の逆転トライを演出。リーグ2位14トライと飛躍した後輩を「木田がオーラを出してくれた」とたたえた。

分岐点があった。

SOフォーリーの3PGにより、前半を9-3とリードして迎えた後半。残り15分となり、相手WTB長田のトライで初めて追う展開になった。円陣を組み「戦術を変えたら、相手の思うつぼ」と共有した。

従来通りにキックを用い、強力FWで前に出た。決勝トライもSH藤原のキックが起点。主将は「意思統一でき、トライにつながった」と評した。

入団した11年前、チームは2部だった。

農業機械メーカーで学生の認知度は低く、世代の目玉選手獲得は苦戦続き。それでも代表入りを期待された天理大の司令塔が、チームの熱意で入団を決めた。

「あの頃はここ(決勝)をイメージできなかった」

本音だった。

先達は7年前にやってきた。16年、世界最高峰「スーパーラグビー」2連覇の経験を持つ、ルディケHCが就任。名将は「正直に思いを伝え合おう」と何度も訴えた。

当初は全体ミーティングで意見が出ず、雰囲気で何となく伝える日本独特の空気感に戸惑った。1対1の面談に形を変えて「イエスかノーか」と選手に妥協なく向き合った。

一方で日本の生活に慣れてきたわが子が、母国の南アフリカで散乱したゴミを拾う姿に驚いた。強豪国で培った経験を注ぎ込み、日本の良き文化も理解した。30歳のプロップ北川は「普段からいいことも、悪いことも言い合う。それが信頼につながる」と変化を実感した。

この日の先発15人中7人が関西の大学出身。登録メンバー23人のうち、大学日本一を知るのは途中出場のSH藤原忍(天理大)だけだった。

初めて日本の頂点に立ち、立川が言い切った。

「クボタスピアーズが好きです。クボタの人が好きですし、チームが好きだったから、最後まで戦い続けたいと思った。日本一を目指したいと思いました」

33歳の苦労人は、穏やかにほほえんだ。【松本航】

◆クボタスピアーズ船橋・東京ベイ 1978年(昭53)創部。スピアーズ(槍=やり)は、敵の守備を槍のように突き破り、敵の攻撃に突き刺さるようなタックルで止めるという意味からつけられた。90年のクボタ創業100周年を機に、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグラウンドとクラブハウスを整備。4月からは本拠の江戸川区陸上競技場のネーミングライツを取得し「スピアーズえどりくフィールド」となった。選手数は61人。マスコットはユニコーンのスッピー君。