来夏のパリ五輪予選として開催されるW杯バレーが、いよいよ迫ってきた。女子は16日、男子は30日に、ともに東京・代々木第1体育館で幕を開ける。先陣を切る女子日本代表(世界ランキング8位)の初戦の相手はペルー。92年バルセロナ五輪以来となる大会1年前の出場権獲得を目指すチームのキーマンを「火の鳥の羽」と題し、全6回で紹介する。第1回は石川真佑(23=フィレンツェ)。Vリーグで日本人最多得点記録を更新したエースが、力強いサーブでパリへの道を切り開く。

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このアタッカーの右腕が、カギを握る。アウトサイドヒッター石川真佑。男子代表の主将、石川祐希の妹で、攻撃の中心を託される。7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)では、コンディション不良や新戦力を積極的に起用したチーム方針もあり、スタメンを外れることもあった。「自分のプレーを出し切れずに終わってしまった」と唇をかむが、その鬱屈(うっくつ)は五輪予選で解放する。

身長174センチ。アウトサイドヒッターでは小柄ながら、力強いスパイクに加え、鋭いジャンプサーブで昨季Vリーグで日本人最多得点記録を更新(735点)した。真鍋監督が掲げる代表チームの最重要課題はサーブ力の向上。その“模範”として底上げ役も担う。VNLでは、自身のプレーこそ不完全燃焼も「サーブで昨シーズンよりも崩せていた」と、チーム全体のレベルアップを感じている。

かつてはサーブに対して「苦手な部分があった」と明かす。ターニングポイントは、18歳で初代表入りした19年。男子のW杯を見て、意識が変わった。「サーブで相手を崩してたり、点数を取れることが多いなと。世界基準でその重要性を感じました」。トスの位置を細かく修正しながら、体重を乗せてコースに打ち分けられるようにフォームを改善。「継続したことで、今こうして打ち切れている」と、徹底した反復練習で武器にした。

下北沢成徳高で日本一、世界ジュニア選手権優勝や東京五輪出場など華々しい経歴を持つ。順風満帆なエリート街道を歩んできたように見えるが、たゆまぬ努力と向上心で結果をつかんできた。「特に影響された人はいない。やるからには高いレベルでやりたいし、結果を追求したい」と、自ら道を切り開く。「何としてもつかむ」と誓う五輪切符を手に、W杯後は兄と同じイタリアで、さらなるレベルアップを目指す。そのレールは、真っすぐパリへと延びている。【勝部晃多】

◆パリ五輪への道 パリ五輪出場枠は開催国フランスを含む12。五輪予選のW杯バレーは、世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、日本など3都市で対戦。各組上位2カ国の計6カ国が出場権を獲得する。残る5枠は、来年のVNL予選ラウンド終了時の世界ランキングにより決定し、W杯バレーで出場を決めた6カ国+フランスを除く世界ランキング上位5カ国が出場権を得る。日本がW杯バレーで獲得を逃した場合は、来年のVNLに出場しランキングのポイントを重ねていくことが必要となる。

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