来夏のパリ五輪予選として開催されるW杯バレーが、いよいよ迫ってきた。女子は16日、男子は30日に、ともに東京・代々木第1体育館で幕を開ける。先陣を切る女子日本代表(世界ランキング8位)の初戦の相手はチリ。92年バルセロナ五輪以来となる大会1年前の出場権獲得を目指すチームのキーマンを「火の鳥の羽」(全6回)と題して紹介する。

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アウトサイドヒッター井上愛里沙(28)が、若手へのこまやかな気配りで屋台骨を支えている。得点源としてチームをけん引しながら「若い選手にはのびのびやってほしいので、いいところを引き出せるような声がけを意識してます。人と人をうまくつなげられるような役割ができればいい」。自らの経験を還元し、時に意見を求めることもある。“一丸”に欠かせない存在だ。

胸に秘める言葉は「人は限界を何度でも超えて強くなる」。決して順風満帆なバレー人生ではなかった。筑波大1年時の14年に代表初選出も16年リオデジャネイロ、21年東京と五輪出場を逃した。1度は引退も考えたが昨年、真鍋監督からの熱烈オファーで代表復帰。バックアタックを武器に、世界選手権では全試合に出場した。スパイカーとしての力を大舞台で示し「通用する」と世界と渡り合える手応えをつかんだ。

昨季はフランス1部サンラファエルで武者修行。「トレーナーがいつもいるわけではなかったので、自分で体をコントロールしなければならなかった。日本の環境はすごく恵まれている。もっともっとやらないといけないな、と」。勝利への渇望は増し、責任感はより強くなった。

目標に掲げるのは「誰が出ても勝てるチーム」。選手の1人1人の自覚と、メンバーの連係が不可欠だ。「全員が自分が何をすべきなのかを明確にして、もっともっとコミュニケーションを取っていきたい」。遅咲きのアタッカーは、八面六臂(ろっぴ)の働きを誓う。【勝部晃多】

◆パリ五輪への道 パリ五輪出場枠は開催国フランスを含む12。五輪予選のW杯バレーは、世界ランキング上位24カ国が8カ国ずつ3組に分かれ、日本など3都市で対戦。各組上位2カ国の計6カ国が出場権を獲得する。残る5枠は、来年のVNL予選ラウンド終了時の世界ランキングにより決定し、W杯バレーで出場を決めた6カ国+フランスを除く世界ランキング上位5カ国が出場権を得る。日本がW杯バレーで獲得を逃した場合は、来年のVNLに出場しランキングのポイントを重ねていくことが必要となる。

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