勝利の瞬間を石川祐希(27=ミラノ)はベンチから見守った。最終セット、5連続失点で10-11と逆転された場面で交代を告げられた。「パフォーマンスが全然良くなかったので、下げられるのは当然。本当に今日は仲間に助けられた」。試合後は安堵(あんど)感をにじませながら、「ありがとう」とメンバーと恒例のハグを交わした。

相手サーブの標的にされた。レシーブが乱れ、日本の強みでもある守備から攻撃につなぐ精度を欠いた。スパイクも「無理やり打ちにいってシャットを食らう場面が多かった。2セット目までうまくできていた部分も単調になった」。優勝した8月のアジア選手権以降、腰痛で思うように練習できなかった影響もあっただろう。それでも「それは言い訳にならない。僕の今持っているものが今日は出た」と受け止めた。

7月まで行われたネーションズリーグ(VNL)で77年W杯以来の世界大会表彰台となる銅メダルを獲得。主将として「自分たちは強いということをあらためて証明したい」と誓って臨んだ今大会。初戦で五輪出場経験もないフィンランドに思わぬ冷や汗をかかされ「自分たちで逆にプレッシャーをかけていたのかもしれない」と振り返った。

VNLで2年連続準優勝の米国(世界2位)、22年世界選手権4位のスロベニア(同8位)、セルビア(同9位)との対戦を控える後半が正念場。「一切気が抜けない大会になる。それを試合をやって、あらためて感じた。もう1度気を引き締めていきたい」。開幕戦での苦い経験を、五輪切符への良薬にする決意だ。

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