アジア最高峰の自動車レース「全日本スーパーフォーミュラ(SF)選手権」に日本人女性として初参戦するJuju(本名・野田樹潤、18)の大きな挑戦が幕を開ける。

15日、4月に入学する日大(東京・世田谷区)で記者会見。3月9日開幕の第1戦(三重・鈴鹿サーキット)へ気合を入れた。世界3大レース「ルマン24時間」制覇経験を持つ小林可夢偉(37)らトップレーサーが名を連ねる舞台で、夢のF1参戦への第1歩を踏み出す。

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赤と白を基調としたデザインの相棒を見つめ、Jujuの胸は躍った。「格好いい。マシンはともに戦っていく仲間。一緒に助け合いながら頑張っていこうね、という感じです」。父は元F1ドライバーの英樹氏(54)。3歳からレーシングカートに乗った。4歳でレースデビューし、20年から欧州を中心に活動。昨年12月のテスト走行を経て、チーム「TGMグランプリ」からSFに参戦する。

「ギリギリ女子高生でデビューできる。女性は通用しないというのを払拭したい。モータースポーツ業界に一石を投じたい」

そんな女子高生は、しっかり第1関門を突破していた。前日14日に地元岡山で普通運転免許を取得。原則18歳以上が対象となる国内の競技ライセンスに必要だった。普段のレーシングカーは1人乗りで、最高時速は約320キロ。まず教習所内の20キロ走行に慣れず、さらに「同乗者の方がいるのは初めて。今までは急ブレーキ、急発進でしたが、それもしないように…」と苦笑い。難しく感じた縦列駐車も克服? した。同乗した同世代の女性に「結構、運転うまいですね」と褒められたエピソードも披露。Jujuの“本業”を知る指導教官を介して会話が弾んだという。もちろんAT限定ではなく、マニュアルの免許を無事手にし「若い同年代の方も、車に興味を持ってくれたらうれしい」とほほえんだ。

春からは東京拠点の新生活を始め、レースと学業を両立する。経験値を求め、欧州のレースも出走予定。SFはF1に必要な「スーパーライセンス」が最短2年で取得可能で、日本人女性初の快挙への大事なステップとなる。だが、一筋縄でいかないと覚悟する。

「すぐに勝ち抜くのは現実的ではない。レースを始めた時から言ってきた言葉『負けても負けても諦めない』を大切にしたいです」

尊敬する父、多くの支援者らと目指すF1。その第1章が、始まる。【松本航】

◆野田樹潤(のだ・じゅじゅ)2006年(平18)2月2日、東京都生まれ。岡山・美作市育ち。3歳でカートに乗り、4歳でレースデビュー。9歳でF4を運転。14歳だった20年のデンマークF4参戦を皮切りに欧州を軸に活動。昨季は国際F3「Zinox F2000フォーミュラトロフィー」で女性初の年間チャンピオン。東京・日体大桜華高3年。昨年まで海外中心の生活ながら、遠隔で学業に励んだ。170センチ。

◆女性ドライバー 女性初のF1ドライバーは58年にエントリーしたフィリッピス(イタリア)で、ベルギーGP決勝で10位完走を果たした。ロンバルディ(イタリア)は75年スペインGPで6位入賞し、女性唯一のポイント獲得者となった。近年では、カルデロン(コロンビア)が20年に全日本SF選手権に参戦。日本のトップフォーミュラでは23年ぶりの女性ドライバーとなった。

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