【アンジェ(フランス)=松本航、松本愛香通信員】日本女子3人目のGPデビュー戦優勝を飾った中井亜美(17=TOKIOインカラミ)が、シリーズ上位6人対象のファイナル(12月、名古屋)進出へ決意を新たにした。18年NHK杯の紀平梨花、22年スケートカナダの渡辺倫果に続く快挙から一夜明け、思いを語った。SP78・00点に続き、フリー149・08点、合計227・08点といずれも今季世界最高。26年ミラノ・コルティナ五輪代表3枠入りだけでなく、本番でのメダル候補に躍り出た新星が華麗な成長曲線を描く。
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喜びの涙から一夜明け、中井は穏やかな表情で会場に現れた。夜は午前0時まで眠れず、7時半に目が覚めるとLINEのメッセージがたまっていた。「懐かしいお友達からも来ていて『そのぐらい有名になっているんだな』と思いました」。初々しく反響をかみしめると、次戦の第3戦スケートカナダ(10月31日~11月2日、サスカトゥーン)へと冷静に言葉を発した。
「結果をあまりプレッシャーに捉えず、ファイナルへ1歩進んだ。次の試合も演技に集中すれば結果もついてくる。いいイメージだけを持ってやりたいです」
夢舞台への1歩目で衝撃を与えた。12月まで続く五輪代表選考。2~3枠目の選考対象の1つにGPファイナル日本勢上位2人がある。フリーはトリプルアクセル(3回転半)で氷に片手をつきながらもまとめ、SP、合計点と全てで今季世界最高得点。単純比較はできないが、昨季の世界選手権を制したアリサ・リュウ(米国)の222・97点をも上回った。優勝を知った「キス・アンド・クライ」では涙があふれ「今までにない緊張だった。ジャンプが全部降りられて『終わった~』という解放感でした」と喜びをかみしめた。
昨季までは同じ高校2年生の島田麻央(木下グループ)を追う立場だった。ジュニアでは全日本選手権、世界選手権の頂点を取れず「気持ちが強くなった。麻央ちゃんがいてくれたからこそ、シニアに上がってからも戦えている」とかみしめる。3月。最後の世界ジュニア選手権ではSP3位で迎えたフリーで失速し、表彰台を逃す4位。開催地ハンガリーから、涙声で母に電話した。「今までやってきたことがこれだったから、現実を受け止めないといけないよね」。その言葉が心に刺さり「全部を変えないとダメ」と発奮した。
シニア1季目のホープは多くの伸びしろを持つ。演目全体を見通して今大会はSP、フリー各1本にとどめた3回転半も、練習ではフリー2本を跳んでいる。
「1本でもう少し完成度を上げて、その後に2本で、どこまで自分ができるかを確かめていきたいです」
勝負のシーズン。17歳には底知れぬ可能性がある。
○…坂本は後輩の台頭に発奮した。節目のGP20戦目、最後の海外GPを中井に次ぐ2位で終え「シーズン後半みたいな点数(224・23点)でも優勝できない。最後まで自分の結果が分からないというのは、すごくワクワクするし、このドキドキ感は特別。むっちゃ燃える」と歓迎した。次戦は第4戦NHK杯(11月7~9日、大阪)となり「試合しかできない緊張感は、試合を積んでやっていくしかない」と対応していく。
◆女子シングルの五輪への道 日本の出場枠は3。全日本選手権(12月18~21日、東京・代々木第一体育館)の優勝者が1人目で代表内定。2人目は全日本の2、3位、GPファイナル(12月4~6日、愛知・IGアリーナ)の日本勢上位2人、全日本終了時で国際スケート連盟(ISU)公認のシーズン最高得点上位3人から選出。3人目は全日本終了時の世界ランキングや、日本連盟独自の国際大会ポイントの上位3人などを選考対象に加える。
◆ミラノ・コルティナ五輪の年齢制限 国際スケート連盟(ISU)は22年6月、シニアの年齢制限を15歳から段階的に17歳へ引き上げると発表。スケート界のシーズンの切り替わりは7月1日で、今季は25年6月30日時点での満17歳が条件。日本では高校2年生の世代にあたり、08年4月27日生まれの中井はシニアへ転向。同10月30日生まれの島田はジュニアとなる。


